イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ピンク(P!nk)の出し直し盤ベストアルバムは"失敗しない"のか? ベストアルバムの最善策をあらためて提唱する

ピンク(P!nk)が2010年にリリースしたベストアルバムが『Greatest Hits… So Far 2019!!!』として先月日本でリリースされました。

これは収録曲の「So What」がドラマ『ドクターX~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日 木曜21時)主題歌に起用されたタイミングでの出し直し盤となるのですが、リリース当初から違和感が拭えなかったこの出し直し盤の、『ドクターX…』に出演する岸部一徳さんが役のまま出演したCMが登場したことでさらなる違和感を覚えたゆえ、今回表明します。

ソニーミュージックのホームページにあるアルバムタイトルはカタカナでは『グレイテスト・ヒッツ… ソー・ファー 2019!!!』と表記されるのですが動画では一部省略。意味は通じるとしても、(タイトルを付けた)ピンクに対して失礼です。

 

今回の出し直し盤ベストアルバムは、2010年リリース版に「So What (Bimbo Jones Radio Mix)」をボーナストラックとして追加、曲順も「So What」を冒頭に据える等変更していますが、追加投入されたリミックスは2008年にリリースされており目新しさはみられません。

また、この9年の間にピンクは3枚のオリジナルアルバムをリリースしています(『The Truth About Love』(2012)、『Beautiful Trauma』(2017)、『Hurts 2B Human』(2019))。特に『The Truth About Love』からは「Blow Me (One Last Kiss)」が米ビルボードソングスチャートで5位、「Try」が同9位、そしてネイト・ルイスを迎えた「Just Give Me A Reason」が同首位となるなどヒット曲を連発しているのですが、この3枚のオリジナルアルバムからは今回のベストアルバムに一切選ばれていません。出し直し盤なので仕方ないと言われればそれまでですが、この9年におけるピンクの活動はなかったかの如き扱いと捉えられてもおかしくありません。

それでいて、今回の出し直し盤の価格設定は税込2420円。実は9年前リリースのベストアルバム、4年前に解説や歌詞対訳は省かれながらも税込1100円でリリースされているのです(→こちら)。これはソニーミュージックが実施した廉価盤"ヨーガクトクセン1000"シリーズでのリリースであり、ベストアルバムは売れ続ける性質があるためCDショップはこちらを入荷し在庫を抱えていた可能性があります。そんな状況下で、ボーナストラックわずか1曲(それも既発曲)且つ倍以上の価格の作品を投入されるのは店側にとっても苦しいのでは。もしかしたら「So What」が『ドクターX…』主題歌に起用が決定したタイミングでベストアルバム出し直しアナウンスと出し直し前の作品の撤去等を求められたかもしれませんが。

さらに、ソニーミュージック内におけるピンクのホームページ(→こちら)を見ると、この情報は未掲載のまま。

11月18日に発表されたこの記事は、ピンクの家族思いの側面を示す好いニュースだと思ったのですが、仮に『ドクターX…』主人公の大門未知子像とそぐわないとして割愛したのだとしたら非常に残念です。楽曲のイメージばかりを優先し、ピンク自身を思いやる心を持ち合わせていないのではないかとすら考えてしまいます。

 

ベストアルバムについては第2弾、第3弾…と出てくるのは自然なことです。またサブスクリプションサービス時代にあっては過去曲もまた流行り出す可能性が強まっており、ベストアルバムの存在価値は高まるかもしれません。ただ、廉価盤までリリースしたものを収録曲数をほぼ変えず通常価格に戻すような形で販売するのはいただけません。ならば、アルバム名に"2019"として新作のような印象を与えるのではなく、2010年台の代表曲も網羅し別の作品としてリリースしたほうがCDショップに対しても、以前のベストを持っていた方にとっても、そしてピンク本人にとっても良かったのではないでしょうか。そういう意味ではこの出し直しベストアルバムは"失敗しない"どころか"失敗しかない"と言っていいでしょう。

 

最後に、以前記載したベストアルバムに希望する4条件のエントリーを再掲します。これは邦楽のみならず洋楽にも当てはまることです。