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ジュース・ワールド、訃報を受けてSpotifyデイリーチャートを席巻…ビルボードソングスチャート初の首位獲得なるか

ラッパーのジュース・ワールドが今月8日、21歳という若さで亡くなりました。日本でもYahoo! JAPANのトップページに記事が登場し、NHKでも紹介されるなど、彼の死の大きさが伝わってきます。

あのスティングもジュース・ワールドに対し哀悼の意を表しています。

ジュース・ワールドをブレイクに導いた「Lucid Dreams」(2018)は、映画『レオン』の主題歌に用いられたスティング「Shape Of My Heart」をサンプリング。スティングは数多あるサンプリング曲の中でも「Lucid Dreams」が気に入っており、昨年コラボアルバムをリリースしたシャギーと共に米ラジオ局NPRの人気企画『タイニー・デスク・コンサート』に出演した際、「Shape Of My Heart」にコーラスの男性が「Lucid Dreams」の一節を差し込むマッシュアップを披露しています。

「Lucid Dreams」は米ビルボードソングスチャートで昨年最高2位まで上昇し、年間でも昨年は12位、今年は48位を記録。ジュース・ワールドは今年のビルボードミュージック・アワードでトップ・ニュー・アーティスト賞を獲得し、将来を嘱望されていたのです。

「Lucid Dreams」はミュージックビデオも話題に。ビデオを制作したのはリリカル・レモネードというプラットフォームを取り仕切るコール・ベネット。元は地元歌手を紹介するブログだったリリカル・レモネードがビデオ制作に着手すると、アニメーションや色彩などコール独特のセンスが話題となり注目を集めます。コールが手掛けたリル・テッカ「Ransom」(2019年)も米ビルボードソングスチャート週間4位、年間28位とヒットし、リリカル・レモネードは現在のシーンに欠かせない存在になりますが、ジュース・ワールドはプラットフォームを今の位置に導いた立役者と言えるでしょう。

サンプリングやミュージックビデオのみならず、『ロックミュージックにも影響を受けながら厭世観や内省的な感情をラップする』エモ・ラップ(『』内はBAD HOPに続くスターは現れるか? 渡辺志保が注目の若手ヒップホップクルーを解説 - Real Sound|リアルサウンド(2018年10月12日付)より)の興隆も支持を集める要因となりましたが、エモ・ラップシーンをリードしてきたリル・ピープは一昨年の11月に21歳の若さでオーバードーズにより事故死、エックスエックスエックステンタシオンは昨年6月に20歳で銃殺され、シーンを担うはずだったジュース・ワールドも帰らぬ人となってしまいました。

 

さて、次週のチャートに注目です。エックスエックスエックステンタシオンの生前の音源から生まれた最後のオリジナルアルバム『Bad Vibes Forever』が今月6日にリリースされ、次週発表される12月21日付米ビルボードアルバムチャートで3作連続での首位が期待されるのですが、その行く手をジュース・ワールドが阻むかもしれません。

訃報を受け、12月8日の米Spotifyデイリーチャートでは「Lucid Dreams」が1位、ヤングボーイ・ネヴァー・ブローク・アゲインをフィーチャーした「Bandit」(2019年)が2位に急浮上し、ジュース・ワールドはトップ10内に5曲もランクイン。そして翌9日にはトップ5をジュース・ワールドが独占したのです(1位から順に「Lucid Dreams」「Bandit」「Robbery」「Legends」「All Girls Are The Same」)。「Bandit」もコール・ベネットがミュージックビデオを手掛け、米ビルボードソングスチャートでは最高10位を記録していますが、そのビルボードでジュース・ワールドが初の首位を獲得する可能性が出てきました。ただその場合、一定期間以上上位に登場した曲が一度でも基準の順位を下回ればチャートから除外される米ビルボードソングスチャートのリカレントルールが以前適用されたであろう「Lucid Dreams」がどうなるか、気になるところではあります。

サブスクリプションサービスの再生回数などで構成されるストリーミング指標が米ビルボードソングスチャートで大きなウェイトを占めるようになり、急逝に伴う上昇度合いはさらに高まっています。エックスエックスエックステンタシオンも、生前7位が最高だった「Sad!」が訃報を受けて初の首位を獲得したのです。

2018年6月30日付米ビルボードソングスチャートでは「Sad!」がストリーミング前週比264%となり、前週から51ランクアップして制覇。他の曲もストリーミングが急上昇し、訃報が注目を集める形となりました。そしてジュース・ワールドについては、12月8~9日のストリーミングが前2日間の453%とジャンプアップしているのです。

ストリーミングは米ビルボードアルバムチャートにおいても加算対象となり、曲の急上昇はアルバムにも波及します。ジュース・ワールドのアルバムやミックステープがチャートを急上昇すれば、エックスエックスエックステンタシオン共々亡くなった方が12月21日付米ビルボードアルバムチャートで上位を独占するかもしれません。アルバムチャートは日本時間の12月16日月曜早朝、ソングスチャートは翌17日火曜早朝に発表されます。

 

訃報を機にチャートをチェックせよというのは不謹慎かもしれませんが、ジュース・ワールドが遺した音楽に触れる人が多いほどチャートを駆け上がり、不在の大きさが可視化されるのです。