イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

あいみょんとの「怪物さん」もヒット中、平井堅の"人間の業を描く歌詞×女性ボーカルとのタッグ"が最強な件について

このブログにて紹介しているビルボードジャパンのソングスチャートにおいて勢いのある曲を調べるには、総合および指標毎のチャートを調べることが出来るCHART insightについて、構成指標のすべてで100位以内に入っている曲を探すのもひとつの手段だと考えています。

最新4月20日付ソングスチャートはこのようになっています。

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最新週よりしばらくの間、カラオケ指標は集計取り止めとなるため7指標で構成されるソングスチャート。そのうちシングルCDを発売していない曲はシングルCDセールスおよびルックアップがカウントされないため残り5指標がフルで100位以内に入っていると勢いがある、と捉えていいと思うのです。それを踏まえ、上位20位中全指標が100位以内に入っている曲はOfficial髭男dism「I LOVE...」(総合1位)、LiSA「紅蓮華」(3位)、三代目J Soul Brothers from EXILE TRIBE「Movin' on」(4位)、そして平井堅 feat. あいみょん「怪物さん」(15位)。

先月末デジタルリリースされた「怪物さん」は、先週ミュージックビデオをリリースしたことで動画再生指標を加算した結果、最高位を更新。

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ラジオエアプレイの強さが突出しており、次週以降ラジオの減少を他指標がどう補完するかがヒットの鍵となるでしょうが、個人的には【女性ボーカルが絡んだ平井堅さんの(提供)曲の凄さ】を押し出すプロモーションが「怪物さん」のヒットの後押しになるのではと思っています。

平井堅さんが女性歌手をフィーチャーした曲といえば安室奈美恵さんを招いた「グロテスク」が浮かびますが、そこでも示された人間の”素直さ”をフォーカスした歌詞は本当にリアル。JUJU with HITSUJI「かわいそうだよね」もそうでしたが、女性が歌う前提で書かれた平井堅さんの曲に宿る説得力たるや。

2020年3月の私的トップ10ソングス+α、選出しました(4月6日付)より

先月の私的ベストに「怪物さん」を挙げた際のコメントを再掲しましたが、「怪物さん」を含む3曲はいずれも人間の持つ素直さとのズレをあらわに押し出しているのです。

安室奈美恵さんを招いた「グロテスク」(2014)では演技して生きる自分を"本当は泣きたいんじゃないですか?"と諭してみせます(歌詞はこちら)。フリーライター石井恵梨子さんはこの曲について、『人前で口にするには憚られる、まさに「グロテスク」な本音ばかりが並ぶ。男女それぞれの視点で語られる告白と質問とが、プラス思考とは真逆の心を容赦なく炙り出していく』と綴っています(平井 堅、安室奈美恵とのコラボ曲「グロテスク」の全貌が明らかに - CDJournal ニュース(2014年3月17日付)より)。

JUJUさんが吉田羊さんを客演に迎えた「かわいそうだよね」(2018 吉田羊さんは"HITSUJI"名義)では、素直な自分を隠し他人を卑下して生きる自分が最終的には、"かわいそうなのは あの子じゃなく ああ あたしだった"と吐露するに至ります(歌詞はこちら)。アルバム『I』にこの曲を提供した平井堅さんは、『今までの彼女に無い、泥臭い、心の嗚咽の様な曲を目指した』と述べています(JUJUニューアルバムに平井堅が「心の嗚咽の様な」新曲提供(コメントあり) - 音楽ナタリー(2018年1月24日付)より)。

 

そしてあいみょんさんを迎えた「怪物さん」。平井堅さんが『バカになりきれない女のやるせなさを歌にしました』という歌詞(→こちら)に込めた心の声の発露も見事(『』内は平井堅が新曲「怪物さん」リリース、あいみょんとコラボする「僕なりの女性賛歌です」(コメントあり) - 音楽ナタリー(3月18日付)より)。それでいてアレンジがダンスポップとしても優れており、サビ終わりのリズムの刻み方がメアリー・J・ブライジ「Real Love」(199)を思わせるところや、最後のサビ始まりで薄く鳴るピアノの心地よいズレ(これもまた1990年代前半のハウスっぽい気が)といった、トオミヨウさんのプロデュースも見事。心地よく聴いていくうちに歌詞の持つ刃がいつの間にか刺さっていた…という方は多いかもしれません。

 

以前「かわいそうだよね」をブログで取り上げたことがあり(→こちら)、その際平井堅さん単独による「ノンフィクション」についても記載したのですが、平井堅さんには是非とも、素直になれないことで他人を傷つけたり自分に嘘を付くことを厭わなくなった人間の業を歌い続けてほしいと思いますし、その際は是非とも女性歌手との共演を願うばかり。聴いて自分のことだと苦しくなりながらも同時に許された思いすら抱くのは自分だけではないはずです。