イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

相次ぐサンプリングにより高まる"アッシャー熱"、その楽曲をまとめてみる

あの頃再び? R&B歌手、アッシャーの新曲「SexBeat」にリュダクリス、そしてリル・ジョンが招かれており、さながらこの3組による米ソングスチャート首位獲得曲の「Yeah!」(2004 アルバム『Confessions』収録)を思い出さずにはいられません。

音楽評論家の林剛さんは「SexBeat」におけるリル・ジョンの登場の様子を『土足で踏み込んでくるような』と形容していて思わず笑ってしまったのですが(ツイートはこちら)、メロウな曲でもがなるリル・ジョンの存在はやはり「Yeah!」、そして当時のアッシャーの勢いを思わせずにはいられないのです。

そのアッシャー、林さん曰く次作『Confessions II』を制作中とのことですが、おそらくそこからの先行曲という位置付けであろうエラ・メイとの「Don't Waste My Time」が素晴らしく、リリースされた1月の私的トップ10入りに選んだ次弟(1月ベストはこちら)。

こうなると『Confessions II』に注目しないわけにはいかないのですが、周囲がアッシャーの再ブレイク(というと語弊があるかもしれませんが)をさらにもり立てるような曲が続々と登場しているのです。

 

「Don't Waste My Time」同様、1月の私的ベストにて「A Muse」を取り上げたdvsnは、今月リリースされたアルバム『A Muse In Her Feelings』からの先行曲として、スノー・アレグラを迎えた「Between Us」を用意。この曲でサンプリングされているのがアッシャーによる「Nice & Slow」なのです。1997年にリリースされアッシャーを大ブレイクに導いたアルバム『My Way』収録曲にして、翌年シングルカットされアッシャー初の米ソングスチャート制覇をもたらしたのがこの曲。

アッシャーのサンプリングはこれだけにとどまりません。アメリカのラッパー、ケヴィン・アブストラクトを中心に結成されたブロックハンプトンが昨年リリースしたアルバム『Ginger』からシングルカットした「Sugar」は、リミックスに今人気のデュア・リパを招いた上で、同じく「Nice & Slow」をサンプリング使用しています。

ブロックハンプトンのYouTubeアカウントには、デュア・リパ以外にも客演がクレジットされた「Sugar」リミックスが公開。その中には1990年代以降活躍し、美メロでも人気となったジョン・Bがクレジットされており、1990~2000年代R&B復権の流れはここにも…と嬉しくなります。

さらに今月には、アーモンドミルクハニー(Almondmilkhunni)による「Bandana」に、アルバム『8701』(2001)からの第一弾シングルとしてリリースされ米ソングスチャートを制した「U Remind Me」がサンプリングされています。

このムーブメントの大きなきっかけではないかと思うのが、サマー・ウォーカー「Come Thru」。評判の高いアルバム『Over It』(2019)収録のこの曲ではアッシャー初のトップ10ヒットとなる「You Make Me Wanna...」(1997 アルバム『My Way』収録)を用い、しかもアッシャー本人を招いているのです。この起用がアッシャーの現役感を周囲に伝え、当時のアッシャーの曲の格好良さを伝播するのに十分な役割を果たしたのかもしれません。

 

この半年の"アッシャー祭り"とでも言うべきムーブメントの発生が、アッシャー自身に大ブレイク期の作品よ再び!という制作意欲をもたらしたのでしょう。さらには今年のグラミー賞で魅せてくれたプリンストリビュートも評判となり、ますます熱は高まる一方。アッシャー自身の次のアルバム、期待せずにはいられません。