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チャート愛好家。ビルボードジャパンや米ビルボードのソングスチャートなどを紹介します。

シングルCDが売れているイコール社会的ヒット曲と言えない? 真に社会的ヒット曲となったかを見極める4つのポイントを紹介します

ビルボードジャパンソングスチャートは次週以降、シングルCDセールスに長けた曲が首位を獲得することが予想されます。

コロナ禍の影響でCDショップが営業自粛したこと、テレビドラマの開始や映画の公開が遅れたこと等で発売延期となっていた作品が徐々に発売に至り、ドラマ『未満警察 ミッドナイトランナー』(日本テレビ 土曜22時 今後開始予定)の主題歌であるKing & Prince「Mazy Night」が今週リリースされると既に45万枚を突破。ジャニーズ事務所所属歌手の作品では17日にKinKi Kids、24日にジャニーズWEST、7月1日にHey! Say! JUMPとリリースが続くことから、CD発売のスケジュールは通常モードに戻りつつあると言えます。

一方で上記速報では、ジェジュンBrava!! Brava!! Brava!!」が1万枚近くを売り上げ3位に登場しているのも興味深いところ。『今年3月に発売した同作に、ミュージックビデオやメイキング映像を収録したスペシャル盤を6月10日にリリース』(上記記事より)とのことで、ファン垂涎の作品と言えるでしょう。

 

さて、このようにシングルCDセールスに長けた作品が毎週のように登場すると、ビルボードジャパンソングスチャートの首位は毎週のように入れ替わることが予想されます。となると、このチャートを見てシングルCDセールスランキングと大差ないと疑問を抱き、ビルボードジャパンのチャートに懐疑的な見方すら示しかねない方も出てくるかもしれません。そこで、シングルCDセールスが強い曲が真に社会的ヒット曲であるかを見極めるためのポイントを4つ、紹介したいと思います。

 

① シングルCDセールス加算初週、シングルCDセールスのチャート構成比に占める割合は高すぎないか?

チャート構成比はビルボードジャパンのCHART insightより確認出来ます。

CHART insightには最新週のソングスチャート、アルバムチャート20位まで、およびアニメソングスチャート10位までの総合順位および指標毎の順位が掲載。過去に遡って確認することも可能。また曲名をクリックするとその曲の総合および指標毎の推移が登場し、最新週におけるチャート構成比も表示されます。

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こちらは最新6月15日付ビルボードジャパンソングスチャートで8位にランクインしたStray Kids「TOP」のCHART insight。順位の右側にある円グラフはチャートを構成する8指標(記載時点ではコロナ禍を考慮しカラオケ指標が集計取り止め中のため7指標)の割合を示しています。これをみると「TOP」は、今週はじめて加算された日本でのファーストシングルのCDセールスがチャート構成の8割近くとなっており、これが上昇の原動力となっていることが解ります。

ただし、気になるのは他指標の低さ。デジタル先行リリースのためか、ダウンロード(CHART insightでは紫で表示)やサブスクの再生回数を基とするストリーミング(青で表示)がCDリリース前にランクインしていますが、今週はダウンロードの再ランクインこそあれど、ストリーミングはポイント加算対象外(同指標300位未満)となっています。シングルCDセールスは所有指標であり一回買えばよいという特性上、翌週この指標のダウンは免れず、ゆえに他指標でカバー出来なければ次週総合チャートで急落することは必至といえます。

他方でロングヒットする曲は、ストリーミングがチャート構成比の5割、動画再生が2割から4分の1程度を占めるという法則があり、この法則をなぞることが理想と言えます。下記ブログエントリーはカラオケ指標を含めた上で法則を割り出していますが、カラオケ指標が集計取り止め中の現在においても当てはまるものと考えます。

 

② シングルCDセールス加算初週、シングルCDセールスに比べてルックアップの順位は低すぎないか?

ルックアップとは、パソコン等にCDを取り込んだ際にインターネットデータベースへアクセスされる回数のこと。この指標の存在により、ユニークユーザー数およびレンタル回数を推測出来ます。

ユニークユーザー数とは実際の購入者数のこと。100万枚売れていてもひとり平均10枚購入したならばユニークユーザー数は10万人となります。10枚買ったとして、盤の内容が全て同じならばパソコンに取り入れるのは1枚で済むわけで、売上枚数に比べてルックアップが少なくなることは自明と言えます。またレンタル回数が多ければ取り込む方が増え、ルックアップが伸びます。CDセールス順位とルックアップの順位が同等か、むしろ後者が高い作品はすなわちレンタルが多く、CDでの接触数が高いと言えるのです。今年度上半期のアルバムチャートにおけるKing Gnu『CEREMONY』およびOfficial髭男dism『Traveler』はルックアップが非常に強く、レンタルの多さも如実に示しています。

一方で、先に取り上げたStray Kids「TOP」はシングルCDセールス指標が1位に対し、ルックアップが51位と大きく下回っています。これはレンタル量の少なさ(というより、現在のレンタル店舗では大型店でない限り、著名な男性アイドルやK-Popアクトでなければ在庫自体置かない可能性もあるのですが)、そしてユニークユーザー数の多くなさを示しています。接触の多さはライト層(曲に興味はあれども歌手のファンというほどではない、という方)の多さ、所有の多さはコアなファンの多さを示していると考えれば、「TOP」はコアなファンによって支えられていると言えるのです。

 

③ シングルCDセールス加算2週目、総合チャートにおけるポイント前週比は低すぎないか?

①と②を踏まえた上での③とも言えるのですが、CDセールスに特化し他指標が伴わず、またコアなファンに支えられているとなると、シングルCDセールス加算2週目のチャートで急落することはほぼ間違いありません。その最たる例が近年のAKB48の動向です。

2018年秋以降のシングルCD表題曲はシングルCDセールス加算初週に総合チャートを制しながらも翌週は20位以下に急落。総合チャートは50位までポイントが表示されますが、AKB48の直近のシングル「失恋、ありがとう」はシングルCDセールス加算2週目に総合50位未満となり、ポイント前週比が計算出来ない事態となっています。

シングルCDセールスに長けたアイドル曲の動向をみると、ジャニーズ事務所所属歌手が10~20%の範囲、坂道グループが20%強(しかしながら最近は20%を切ることが増えています)、AKB48は5%未満というのがシングルCDセールス加算2週目の総合チャートにおけるポイント前週比と言えます。この水準を打破するにはシングルCDセールスに頼らない戦略が必要なのです。

一方で、今年度上半期ソングスチャートで2位にランクインしたOfficial髭男dism「I LOVE...」は、シングルCDセールスに長けた曲とは対照的な動きをしています。

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シングルCDセールス加算2週目のポイント前週比は9割超えを達成。主題歌となったドラマ『恋はつづくよどこまでも』(TBS)の再放送効果が薄れた5月以降はポイントがダウンする傾向にありますが、ポイント前週比は9割前後を推移しています。特徴的なのは所有指標(CDセールスおよびダウンロード)に対し、接触指標のストリーミングはダウンするとしても前週比9割台をキープしていること。接触指標が全体の落ち込みを抑えていることが解ります。

 

④ チャート構成比においてTwitter指標が高すぎないか?

こちらについては最近分析を実施し、ビルボードジャパンに対しTwitter指標のウェイトの見直しを図る必要があると提案しています。

Twitter指標を上昇させるためのファンによる積極的な活動が目立ってきたことが、上記ブログエントリーで記載したTwitter指標動向の定点観測からよく解ります。この指標の強さが、たとえばジャニーズ事務所所属の新人2組であるSixTONES「Imitation Rain」およびSnow Man「D.D.」が今年度上半期ソングスチャートでトップ10入りを果たした原動力と考えます。

ジャニーズ事務所所属歌手は基本的にデジタルに放たれていないためレンタルCD以外に接触する手段が乏しく(ミュージックビデオがショートバージョンであれば動画再生指標で思ったよりも伸びないことはLiSA「紅蓮華」等でも証明されています)、また他事務所所属歌手等は先述したようにレンタル在庫の少なさもあることから、彼らのファンの方々がTwitter指標の盛り上げに積極的になるものと思われます。しかしこの活動により同指標のウェイトが上昇するほど、社会的ヒット曲と言えなくなるのではと捉えています。

 

【シングルCDセールス加算初週、シングルCDセールスのチャート構成比に占める割合は高すぎないか?】【シングルCDセールス加算初週、シングルCDセールスに比べてルックアップの順位は低すぎないか?】【シングルCDセールス加算2週目、総合チャートにおけるポイント前週比は低すぎないか?】そしてチャート構成比においてTwitter指標が高すぎないか?…この4点を確認して、真の社会的ヒットに至ったかを見極めることをお勧めします。

ビルボードジャパンソングスチャートの首位が毎週入れ替わる状況を見てCDセールスランキングと大差ないと思うならば、少なくともシングルCDセールス指標加算初週と2週目を見て③を判断すること、あわせてYOASOBI「夜に駆ける」や瑛人「香水」といった上位曲(特にシングルCD未発売の曲)のポイント前週比をチェックすることを勧めます。自分は毎週、首位のみならず2位に入った曲の翌週の動向もあわせて確認しています。

また、今後はジェジュンBrava!! Brava!! Brava!!」のように豪華盤が後から登場する例が増えるかもしれません。コアなファンにとっては垂涎の作品と書きましたが、そんなファンの方々でも、後出しは金銭面でキツいと思う方はいらっしゃるかもしれません。この施策が正しくないとは思いませんが、ならばライト層の拡大施策も同時に図ったほうが好いというのが私見です。ライト層の拡大施策を図るべきなのはデジタル未解禁が多いジャニーズ事務所所属歌手も同様であり、そもそもシングルCDセールスに長けた歌手が接触指標群でも強ければ完璧なヒットと成るわけですから、デジタル解禁を前向きに検討してほしいと強く願っています。