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チャート愛好家。ビルボードジャパンや米ビルボードのソングスチャートなどを紹介します。

”ウィズ・カリファ feat. チャーリー・プース「See You Again」はなぜ今も売れ続けているのか問題”に対する自分なりの回答

一昨日のZeebraさんのツイートが気になっています。

このヒットについて、自分なりの回答をまとめてみます。

 

ウィズ・カリファ feat. チャーリー・プース「See You Again」は2015年春にリリース。映画『ワイルド・スピード SKY MISSION (原題:Furious 7)』の主題歌に起用され、映画共々大ヒットしました。米ビルボードソングスチャートでは通算12週の首位を獲得し、2015年の年間チャートでは3位を記録。映画もシリーズ8作品の中で北米、北米以外ともに最高の興行収入を上げているのですが、映画のクランクアップ直前に主役のひとりであるポール・ウォーカーが死亡。映画の最後ではポールへの追悼が行われ、ミュージックビデオもまた彼へ捧げられているのです。

 

Zeebraさんはダウンロードのロングセラーについて疑問を述べていましたが、まずはダウンロードに限定せず「See You Again」のヒットの要因を探ってみます。最初に、ビルボードジャパンのチャート推移(CHART insight)をみてみましょう。

2015年3月30日付で総合100位未満(300位圏内)に初登場して以来、先週発表された最新6月22日付が274週目にあたります。そこで初週からの150週と最新までの150週のCHART insightを掲載します。

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チャートにおける山はいくつかあり、まず2015年は映画のヒットが牽引したものと推測。トップ10入りこそ通算2週にとどまるもののロングヒットしたことで同年の年間チャートでは19位を記録しています。翌2016年も年間59位にランクインし、シリーズ8作目となる『ワイルド・スピード ICE BREAK』が公開された2017年春には週間25位に再浮上。同年の年間チャートは64位となり、3年連続で年間チャート100位以内ランクインを果たしました。その後2018年および2019年は目立った動きがなかったものの、2020年に突如再浮上。2月17日付で88位に入り一度目の山が築かれ、そして5月11日付の45位を最高位とする2つ目の山が出現したというのが現在に至るまでの大まかなチャートアクションであり、ここ数ヶ月は赤いグラフで示される動画再生指標が牽引している形です。

 

このブログでは昨年、エド・シーラン「Shape Of You」について取り上げました。2017年初頭にリリースされた曲が、(ブログエントリーを掲載した)昨年春になってもロングヒットを続ける理由について、4つの理由を挙げてみました。

① ミュージックビデオが面白く、再生回数を増やしている

② ストリーミングのプレイリストに多数引用されている

③ 曲調がジャンルレスであり使い勝手が好い

④ 日本のソングスチャートにはアメリカにおける”消える”ルールが存在せず、ヒットが可視化されている

上記のうち、④の消えるルール(リカレントルール)は今もビルボードジャパンソングスチャートで存在せず状況は同じことから、④を除く3つの点について、「See You Again」についても形を変えて当てはめてみます。

 

①のミュージックビデオについて、「See You Again」はポール・ウォーカーの喪失と彼への追悼というテーマで統一されています。この深い悲しみを湛えた曲は映画の大ヒットも相俟って多くの方に視聴され、2017年夏にはミュージックビデオにおけるYouTubeの再生記録で1位を獲得しました。後にルイス・フォンシ & ダディー・ヤンキー「Despacito」に抜かれるものの、「See You Again」のミュージックビデオはYouTubeにて、現段階で46億を超える再生回数を記録しています。

以前から高い支持を得ていたこのビデオが今年に入り注目を集めたきっかけとなったのは、バスケットボール選手のコービー・ブライアントが現地時間の1月26日、アメリカで事故により他界したことと関係していると言えるでしょう。コービーの訃報から5日後、彼が所属していたロサンゼルス・レイカーズの試合にてウィズ・カリファチャーリー・プースが「See You Again」を披露しています。

コービー・ブライアントの訃報は日本でも大きく報じられました。さらにチャーリー・プースは4月に開催されたコロナ禍におけるイベント、”Together At Home”においても「See You Again」を披露しています。これらが、「See You Again」の持つ追悼の意を広く世間に知らしめ、ミュージックビデオの視聴に至らせた要因と思われます。

③において、「See You Again」はジャンルレスな「Shape Of You」とは真逆の曲ですが、だからこそ喪失をイメージする曲はと聞かれて真っ先に「See You Again」を連想する方が多いものと考えます。

 

②のストリーミング…サブスクリプションサービスのプレイリストにおいては、「See You Again」をSpotifyで調べたところ、昨夜の段階で260を超えるプレイリストに収録。おそらくApple Music等他のサブスクサービスでも同様と考えられます。多数のプレイリストに用いられることで、「See You Again」を能動的にチェックしたつもりはなくともプレイリスト経由でこの曲を聴く方は少なくないはずです。また、有名曲のカバー(歌唱者はジャケット等に未記載)だけで作られたミックスCDをレンタル店にてよく目にするのですが、『ワイルド・スピード』シリーズを模したと思しきジャケットがあったと記憶しています。「See You Again」自体はバラードでもこの種のCDに収められ、借りてオリジナルが気になり本家にたどり着くという方もいらっしゃるかもしれません。

カバー曲でまとめられたミックスCDには”TikTokで人気の曲”括りのものもありますが、実際にTikTokでも「See You Again」は人気となっています。現段階までに「See You Again」が使われた動画は、最も使われているバージョンで81万4千もの投稿がなされており、動画は喪失をテーマにしたものから日常生活を映したものまで様々。エド・シーラン「Shape Of You」の120万には及ばないものの、たとえばTikTokを機に日本で現在ヒットしている瑛人「香水」の9万6千を大きく上回ります。また、先のZeebraさんへの返信の形でレコードメーカーA&R、音楽ライターのJAMさんが指摘されていますが、曲名のハッシュタグが貼付された動画の総再生回数は2億3千万に達しています。


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(上記を含め、キャプチャやツイートを勝手ながら用いさせていただきました。問題があれば削除いたします。)

日本ではTikTokからサブスクや動画再生に人気が派生する形でヒットする曲がこの半年で増えていますが、「See You Again」においては以前から同様の現象が起きているのではないでしょうか。

 

エド・シーラン「Shape Of You」をなぞる形で、ウィズ・カリファ feat. チャーリー・プース「See You Again」のロングヒットの理由を考えてみました。上記①~③は形を変えてですが当てはまると言えるはずです。

では、冒頭に紹介したZeebraさんのツイートに戻りましょう。Zeebraさんが指摘したのはダウンロードの安定した人気についてですが、ここ最近のダウンロードの推移を先のCHART insightからみてみましょう。

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直近30週分の総合チャートおよびダウンロード指標を取り出したものが上記。5月4日付においてダウンロードが突如54位に再浮上しているのですが、この5月4日付チャートからおおよその数値を予想することが出来ます。

総合チャートでトップ10入りした曲は、シングルCDセールス、ダウンロードおよびサブスクの再生回数に基づくストリーミングといった3つの指標の数値も、それぞれ50位以内に入っていれば記事に掲載されます。ダウンロードにおいて総合トップ10入りを果たした曲のうち50位以内未ランクインのHKT48「3-2」を除き、最も低かったのはOfficial髭男dism「イエスタデイ」の39位、2452DL。この数値から、54位だった「See You Again」は2000DL前後と推測してよいでしょう。その2週後以降はダウンロード指標で100位未満(300位圏内)となっていますが、数値的には1週間あたり1000DL前後と言ったところでしょうか。カウント対象となるダウンロードサービスは現段階で7つあり、おそらく最も大きいであろうiTunes Storeのシェアを5割と仮定すれば、同サービスでの「See You Again」の売上は週間500DL。この数値をどうみるかは人によって解釈が様々でしょうが、個人的には決して小さい数字ではないと思うのです。リアルタイムで更新されるiTunes Storeの楽曲ランキングの対象期間が解りかねることもあり、売上等についての具体的な数値は断言出来ません。しかし今年に入りダウンロードが好調なのは、コービー・ブライアント新型コロナウイルスの犠牲者を追悼するウィズ・カリファチャーリー・プースの姿に感銘を受けた方が少なくなく、彼らの喪失や追悼という思いが「See You Again」の所有欲を高め、好調なチャートアクションに結び付いたと言えるでしょう。

 

実は喪失つながりでもう1曲、同時期に聴かれるようになった曲があります。

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ヴァイストーン & トニー・アイジー「Astronomia」は5月4日付で動画再生指標が23位に急伸。これはTikTokYouTubeでこの曲を用いた棺桶ダンスなるムーブメント(ミーム)が発生し、BGMにこの曲が使われていることが要因とみられます。

喪失に関連した「Astronomia」のヒットで、別角度から喪失を捉えた「See You Again」にも波及している可能性は少なからずあるでしょう。この棺桶ダンスというミームも、注目すべき動きと言えます。

 

 

元来は映画の曲であり、ポール・ウォーカー追悼の意を込めて生まれたウィズ・カリファ feat. チャーリー・プース「See You Again」。映画共々大ヒットしたこの曲が関連作品の公開等のタイミングで浮上していた時期とは異なり、今年はコービー・ブライアントそして新型コロナウイルスで亡くなられた方へ捧げる歌として多くの方に聴かれるようになりました。さらにTikTokの(継続した)流行や喪失関連の別のミームの発生も加わり、今もその人気が続いているというのが自分なりの結論です。具体的な週間売上DL数は解りかねますが、今後もコンスタントに売れていくのではないでしょうか。