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チャート愛好家。ビルボードジャパンや米ビルボードのソングスチャートなどを紹介します。

ヨルシカ『盗作』リリースに向けての盛り上がりが見事な件

6月以降、音楽業界は積極的なリリース体制に戻してきました。その最たる動きが6月10日以降のジャニーズ事務所所属歌手によるシングルCDリリースラッシュだったり、8月5日リリースの米津玄師さんのアルバムおよびOfficial髭男dismのEPだったりします。

そんな中、個人的に注目しているのがヨルシカのアルバム『盗作』(7月29日発売)の動向。今月8日に公開されたアルバムの全曲トレーラーは今朝の段階で98万回再生されており、注目の高さが伺えます。

 

ヨルシカは、いわゆるボカロP、クリエイターとして活動するn-buna(ナブナ)さんが、ボーカリストのsuis(スイ)を迎えて2017年に結成したバンド。これまでに2枚のミニアルバムと2枚のフルアルバムを発表。特に昨年は、『だから僕は音楽を辞めた』『エルマ』という2枚のフルアルバムをリリース、積極的な姿勢をみせています。

実はこの4作品、最近ビルボードジャパンアルバムチャートで存在感を見せているのです。

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上からリリース順に、ビルボードジャパンの直近30週におけるチャート推移(CHART insight)を掲載。週間アルバムチャート最高位は上から順に35位、6位、5位、2位。ファーストミニアルバムは一時期総合300位未満となりましたが他の作品は300位を一度も割り込むことなく、そして全作品が今年5月4日付で大きな山を築き上げます。これは同日付で「花に亡霊」が前週の100位未満(300位圏内)から6位にジャンプアップしたことによるもの。

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アルバム『盗作』から「夜行」に続く2曲目の先行作品となった「花に亡霊」はソングスチャートトップ10入りこそ現在まで2週のみながら、主題歌に起用された映画『泣きたい私は猫をかぶる』が6月18日にNetflixにて全世界公開された影響で緩やかに再浮上し、最新チャートでは23位につけています。またチャート構成比をみると4分の3がストリーミング、4分の1弱が動画再生指標によるポイント。これは以前紹介したロングヒットの法則に当てはまります。

「花に亡霊」は一度、3月23日付ビルボードジャパンソングスチャートで総合100位未満ながら300位以内にエントリー。これは集計期間内の3月10日に映画主題歌担当の発表があり、ヨルシカファンのみならずアニメファンの間でも話題になったことがソングスチャートを構成するTwitter指標で54位、総合チャート300位以内に入った要因と言えます。しかしこのTwitter指標において最も特筆すべき動きなのが、アルバムタイトルが『盗作』と発表されたタイミング。6月1日夕方にアナウンスされるとTwitterではトレンド入りを果たし、アルバムに収録されるタイトル曲「盗作」にこのTwitter指標が加算されたことで6月15日付ビルボードジャパンソングスチャートではTwitter指標8位、総合99位にランクインしたのです。全容どころか曲調も全く分からない状態で、タイトル判明の段階で総合チャートに登場することはアイドル等にはあれどもそれ以外のジャンルでは珍しく、タイトルのセンセーショナルさそしてヨルシカへの期待値の高さが示された結果と言えます。

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ヨルシカの人気を示す上で欠かせないのは、セカンドミニアルバム『負け犬にアンコールはいらない』に収録された「ただ君に晴れ」のカラオケ人気。

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「花に亡霊」以上にサブスクの再生回数を基とするストリーミングが大きなチャート構成比を占める「ただ君に晴れ」ですが、カラオケ指標が全体の7~8%程度を占めるのが大きな特徴。総合チャートのピークは「花に亡霊」の急浮上週と同じく5月4日付なのですが、同週はコロナ禍によりビルボードジャパンがカラオケ指標の集計を取り止めていた時期でした。「花に亡霊」のリリースによりヨルシカ(を歌いたい)熱がさらに高まったのでしょう、カラオケ指標が復活した7月6日付では「ただ君に晴れ」の同指標が過去最高の20位に入り、翌週もキープしています。総合およびカラオケ指標のみを抜き出したチャート推移はこちら。

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カラオケ指標の集計元のひとつであるJOYSOUNDが先週発表した2020年カラオケ上半期ランキングでは「ただ君に晴れ」が昨年(年間)より3ランクアップし28位に登場。アーティストランキングでも34→18位にジャンプアップしています。如何にヨルシカがカラオケでも支持されてきているかが見て取れます。

 

「夜行」が最初の先行曲として配信され、アニメ主題歌として「花に亡霊」が起用、『盗作』という衝撃的なタイトル発表も相俟って、ヨルシカへの注目度は俄然高まりました。旧譜の再浮上やカラオケ熱の高まりからみるに、ヨルシカは『盗作』のリリースに向けての数ヶ月で、歌手への興味を集めることに成功したと言えるでしょう。

 

ちなみに昨年の2枚のフルアルバムおよび『盗作』には、ヨルシカのアルバムコンセプトをより強固に表現する特典を同梱した初回限定盤が用意されています(詳細について、『だから僕は音楽を辞めた』はこちら、『エルマ』はこちら、『盗作』はこちらを参照)。その一方で昨年の作品群はダウンロードでも好成績を収めていることから、ヨルシカの作品がフィジカル/デジタルの区別なく聴かれていることが判ります。また『盗作』においてはサブスクでの聴取を目的としたキャンペーンも用意され、所有や接触に関係なく触れてほしいというスタンスが伝わってきます。

旧譜の盛り上がり、『盗作』リリースへ向けての先行曲の人気は上々。リリース時にどれだけの話題を集めチャートを賑わすか、期待したいと思います。