イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

(追記あり) 米ビルボード、バンドルおよびフィジカル施策にメス…素早いチャートポリシー変更を支持する

(※追記(2023年5月9日14時54分):はてなブログにてビルボードジャパンのホームページを貼付すると、きちんと表示されない現象が続いています。そのため、表示できなかった記事についてはそのURLを掲載したビルボードジャパンによるツイートを貼付する形に切り替えました。)

 

 

 

昨日は米ビルボード最新ソングスチャート速報を紹介しましたが、その数時間後に米ビルボードがチャートポリシー改正を発表しました。開始時期は未定ながら、これは大きな変更となります。

日本語訳はビルボードジャパンにて公開されています。

アルバムチャートにおけるグッズとのバンドルについて、今年1月3日(1月18日付チャート)以降は多少厳しい内容に変更された一方、チケットバンドルについての見直しは行われていませんでした。

しかし1月の変更では『さほど効果がみられなかったため、バンドル売りそのものを除外する運びとなった』とのこと。『今後チャートに反映されるためには、アルバムを商品やコンサート・チケットと同時購入する場合、アルバムは追加物として販売促進されなければ』ならなくなります(『』はビルボードジャパンの翻訳記事より)。

 

アルバムチャートも厳格化しますが、ソングスチャートを毎週追いかける身としてはこちらのほうにより強い関心を抱いています。

今回はさらに、フィジカル・アルバムやシングルにデジタル・ダウンロード・コードが付随している場合、これをデジタル・セールスとしてカウントしない方針を固めた。これは初週売上を促進するために、まだ生産されていないアイテムを利用する慣習に歯止めをかけるためで、今後はそのアイテムが実際に出荷された時に米ビルボードのチャートに反映されるものとする。

米音楽業界では、生産または出荷されるのが実際には数週間から数か月先になる見込みのアナログ盤やCDを含むフィジカル・リリースに、デジタル音源を即日ダウンロードできるコードをつけて販売する戦術が広く実践されている。最近もジャスティン・ビーバーアリアナ・グランデ、そしてシックスナインなどのアーティストが、チャートで上位を狙うためにこの手段を選んだ。

元の記事でも名指しされたアリアナ・グランデジャスティン・ビーバー「Stuck With U」やシックスナインの一連の楽曲(「Gooba」およびニッキー・ミナージュとの「Trollz」はこのフィジカル施策を使って初登場で上位に送り込んできました。トラヴィス・スコットとキッド・カディによるザ・スコッツ名義の「The Scotts」も同様で、しかし翌週にはここで取り上げた4曲がすべてトップ10落ちとなり、また一度としてトップ10内再浮上を果たせていません。そのアリアナがレディー・ガガに招かれた「Rain On Me」も同様の策が採られましたが、リリース翌週にガガのアルバムがリリースされたことでアルバムの勢いが曲にも波及し、トップ10落ちは免れています。しかしこの場合はスケジュールの勝利と言えるかもしれません。

 

フィジカル施策は、米ビルボードソングスチャートを構成するダウンロード指標のブースト機能を果たしていました。ソングスチャートはストリーミング、ラジオエアプレイおよびダウンロードという3つの指標で構成され、最もウェイトの小さいダウンロードを押し上げることが有効に作用するとしてここ最近フィジカル施策が連発されていたのです。しかし施策開始直後に押し上げたとして、所有指標であるダウンロードは基本的に一度買えば済むものであり、ゆえに翌週の急落は必至。ストリーミングも初週の勢いを保てずダウンする一方、火が付くのに時間がかかる(ただし火が消えるのも良い意味で時間がかかる)ラジオエアプレイが追いつかなければ、総合チャートでの急落もまた必至なのです。その結果が「Stuck With U」や「Gooba」、「The Scotts」等に表れたと言えます。「Trollz」に至っては急落の記録を樹立してしまいました。

「Trollz」への厳しい私見を述べた上記ブログエントリーでは、『チャートポリシーの見直しを行って欲しい、少なくとも議論して欲しいと強く願います』と結びました。今回の素早い見直しを強く支持します。

 

今回例示した、フィジカル施策を利用しながらもトップ10在籍が1週にとどまった作品群は年間チャートで高位置につけることはできないはずです。しかし週間で1位というのはあたかも大ヒットのようにみえてしまいます。そのからくりと呼ばれてもおかしくないやり方を排することで、米ビルボードソングスチャートは真の社会的ヒット曲がわかる”鑑”になると思いますし、また常に自問自答できているチャートなのだと実感します。