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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ジャニーズ事務所所属歌手のシングルCD表題曲、チャートの急落度が大きくなっている理由を内外の要因から考える

最近はジャニーズ事務所所属歌手について書く機会が増えています。同事務所をメインにしたブログエントリーはこの1ヶ月で実に6回。彼らの曲には好きなものも多く、たとえばKinKi Kids「KANZAI BOYA」は上半期邦楽ベストのひとつに選んだほど。それゆえもっと広まってほしい、そのためにはデジタル環境の改善が必須ではという思いが、エントリー数に反映されたと考えています。

 

さて、ジャニーズ事務所所属歌手のシングルCD表題曲について、今年度のビルボードジャパンソングスチャートの動向で気になることが。それは、シングルCDセールス加算2週目の総合ポイント前週比が以前より低下していること。これまでは大半の曲が10~20%の間で推移し、中には20%を超えるものもありましたが、今年度は10%未満が増えているのです。

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総合ポイント50位未満はポイント未記載のため、同週50位のポイントを基に推定値を掲載し()内に表記。今年は10曲中3曲、シングルCDセールス加算2週目の総合ポイントが前週比10%未満に。またシングルCDセールス加算2週目に50位を下回るケースも目立っており、今年度は既に3曲となっています。

 

この状況が生まれた理由には内的および外的要因があると言えそうです。外的要因は、全体的なポイントの底上げを指します。

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これまでは50位のみのポイント推移を追いかけていましたが、今回は1位および10位のポイントも併せて掲載。1位のポイントには週により大きな変動がありますが、それ以外は安定して推移。しかしながら10位は最新7月20日付で最高のポイントを記録し、50位についてもカラオケ指標再開後に最高を更新。双方とも上昇しているのです。

このソングスチャート10位および50位におけるポイント底上げの要因は明白です。

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2020年度ビルボードジャパンソングスチャートにおいて、シングルCDセールスは10位と50位、ダウンロードおよびストリーミングは1位と10位の数値を定点観測したグラフが上記。所有を示すシングルCDセールスの50位およびダウンロードの10位は緩やかに下降する一方、接触を示すストリーミング(サブスク再生回数に基づく)は明らかに増加しています。7月13日付では1位および10位共に最高記録を更新しましたが、これはNiziU『Make you happy』収録の4曲全てがトップ10入りしたことが影響しています。

今年に入り目立っているTikTokYouTube発のヒットはまずサブスクに波及する傾向があり、コロナ禍の自粛期間にこの形のヒットが増えています。また海外では、注目度の高いアルバムは解禁直後に収録曲全てがサブスクで上位に登場。たとえばジュース・ワールドの遺作として7月10日にリリースされた『Legends Never Die』は、リリース日に米Spotifyデイリーチャート22位までに20曲がエントリーを果たしています。サブスクのニーズが高まることで、今後『Make you happy』や『Legends Never Die』のような大挙ランクインが日本で定番化するかもしれず、ゆえに他の曲はその波に耐えうる体力が必要となってきます。

しかしながら、ジャニーズ事務所に所属する大半の歌手はデジタル未解禁ゆえ、ストリーミングに動画再生を含めた接触指標を十分に獲得することができません。昨日は今年の作品におけるラジオエアプレイの安定について記載しましたが、初週のCDセールスに合わせてラジオエアプレイやTwitterが盛り上がる分、その反動がより大きくなっているのではと思うのです。その反動、そして接触指標で抑えることができないこと、これが内的要因と言えるでしょう。

 

デジタル環境を解放していないシングルCD表題曲がリリース直後に獲得できる指標はシングルCDセールス、ルックアップ、Twitterそしてラジオエアプレイの4つだというのは昨日も書いた通り。この中で、曲に興味はあれど歌手のファンというわけではないというスタンスのライト層が寄与できる指標があるとすれば、極端に言えばレンタルに伴うルックアップの上昇のみかもしれません。Twitterも可能ですが、今ではファンの熱心なツイート活動もしくは社会的なムーブメント(たとえば米津玄師「感電」がミュージックビデオ解禁日に大きなうねりを起こしたことで、最新7月20日ビルボードジャパンソングスチャートのTwitter指標を制しています)が上位を占めるため、1ツイートの貢献度は以前ほど大きくなくなったものと考えます。

サブスクやYouTubeはライト層でもアクセスしやすく、また1000円を超えるシングルCDよりも250円強の曲単位のほうが気軽に買えることもライト層には嬉しいはず。シングルCDセールスに長けていることは素晴らしいですが、各指標をバランス良く獲得するほうがポイントや順位の急落を抑えロングヒットに至りやすいはずですし、社会への浸透度も高まるものと考えています。