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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

映画主題歌に起用されるOfficial髭男dism「115万キロのフィルム」、ソングスチャートトップ10入りの可能性は

昨日取り上げた『ミュージックステーション』披露曲短尺化の問題について、多くのアクセスをいただいております。異論や反論もあるとは思いますが、これが音楽業界やテレビ制作者への何かしらの気付きになれば幸いです。

 

さて、3日前に放送された『ミュージックステーション』では、Official髭男dismが歌った「115万キロのフィルム」も2分27秒と短尺化されています。実際の尺(5分24秒)の半分以下なのです。

「HELLO」へつながるメドレー形式で披露されながら、ストーリー性のある歌詞の良さが十分に伝わらなかったように思った次第。今回を機にきちんとフルで聴いてくださる方が増えることを願います。

 

この曲がテレビで披露されるに至ったのは、来月公開の映画の主題歌に起用されたためでしょう。

Official髭男dismの映画主題歌といえば、先週公開された『コンフィデンスマンJP プリンセス編』主題歌に「Laughter」が起用されており、同時期公開の2本の作品に新旧の楽曲が用いられることになります。

「Laughter」は最新7月27日付ビルボードジャパンソングスチャートで10位に入った一方、「115万キロのフィルム」は既に最高11位を記録し現在も上位にとどまっていながら、未だトップ10入りには至っていません。

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「115万キロのフィルム」の直近60週におけるチャート推移(ビルボードジャパンのCHART insight)は上記に。アルバム『エスカパレード』の冒頭を飾るこの曲は、ラジオエアプレイによりアルバムリリースからほどなくして一度ビルボードジャパンソングスチャートで300位以内に入るのですが、映画『コンフィデンスマンJP ロマンス編』主題歌のシングル「Pretender」~アルバム『Traveler』~シングル「I LOVE...」と相次いでヒットし、Official髭男dism自体への注目が集まったことで安定的なヒットに至りました。最高位となる11位を記録した今年3月23日付は、「I LOVE...」が主題歌に起用されたドラマ『恋はつづくよどこまでも』(TBS)の9回目が放送された週であり、「I LOVE...」もこの週に首位を獲得しています。

 

最高が11位となると、映画公開のタイミングで「115万キロのフィルム」がトップ10入りを果たすかが気になるのです。そこで各指標の動向からトップ10入りするために必要なことをみていきましょう。

シングルCDセールス指標は、未CD化につき加算されません。CDをパソコン等に取り込んだ際にインターネットデータベースにアクセスされる数に基づくルックアップ指標でも同様です。しかし7月27日付ビルボードジャパンソングスチャートではトップ10入りの半数以上にあたる6曲、且つ上位4位までが未CD化であり、今や未CD化は大きな障壁にはならないでしょう。

ダウンロードは、アルバム『エスカパレード』に収録されていながらも曲単位での購入が好調に推移しているため、今後の上昇が見込まれます。サブスクの再生回数に基づくストリーミングも安定した伸びを見せるでしょう。また『ミュージックステーション』での歌唱や映画『思い、思われ、ふり、ふられ』の公開タイミングでTwitterやカラオケといった指標群が上昇するはず。Twitter指標では主題歌起用がアナウンスされた日を集計期間に含む6月29日付で42位に急浮上、またカラオケ指標は集計を再開後、4週連続で20位以内に登場しています。映画原作が主に若年層の支持を集めれば、その若年層が強さを発揮しやすいこの2指標での上昇は十分考えられます。

一方で気になるのは、まずはラジオエアプレイ指標。映画公開の前週には『HELLO EP』がリリースされ、先述した「Laughter」に加えて「HELLO」や「パラボラ」等、収録される4曲がラジオエアプレイチャートを(再)上昇することが考えられます。ストリーミング指標と異なりラジオエアプレイ指標は票割れを起こしやすいため、「115万キロのフィルム」がラジオエアプレイを予想以上に稼ぐことは考えにくい気がします。

また動画再生指標について。この曲をYouTubeで検索すると公式オーディオやライブバージョンはあれど、正式なミュージックビデオはない状況です。YouTubeのクレジット(”この動画の音楽”欄)をみるに下記ライブ動画もカウント対象と思われ(ただしライブバージョンは、厳密にはオリジナルバージョンの合算対象にならないはずですが)、それが動画再生指標を牽引してきたものとは考えられます。

もしこのタイミングで「115万キロのフィルム」のミュージックビデオが用意されたならば俄然注目度は高まり、動画そのものの再生回数のみならず他指標の増加もつながると思うのです。物理的に制作は難しいかもしれませんが、制作そして公開を期待したいところです。

 

「115万キロのフィルム」がビルボードジャパンソングスチャートで念願のトップ10入りを果たすか? 障壁はそこまで多くはなく、仮にミュージックビデオが公開されたならば勝機はあると思うのですが、一方でトップ10入りは厳しいのではという見方も持ち合わせています。「115万キロのフィルム」が総合ポイントにおいて最高を記録したのは今年3月30日付での3841ポイント(同週12位)。しかし各指標が増加したとして、現在では10位の水準がかなり高くなっているのです。

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今年度の1位、10位および50位の総合ポイント推移をみると、カラオケ指標集計再開後は10位のポイントが毎週のように最高を更新し、最新7月27日付では10位(こちらもOfficial髭男dism自身による「Laughter」)が6435ポイント。この状況下で「115万キロのフィルム」がトップ10を果たすには6千ポイントは必要と言え、現在(7月27日付ビルボードジャパンソングスチャートでは28位・2799ポイント)の倍以上を獲得しないといけません。映画の評判にもかかっているだろうとはいえ、今後の推移が気になるところです。