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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

米津玄師のサブスク解禁が与えるインパクトの大きさ…サブスクに関する歴史が変わろうとしている

サブスクに関する歴史が変わろうとしています。

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2枚のキャプチャは共にSpotifyのデイリーチャート。ひとつは7月24日金曜、テイラー・スウィフトのアルバム『Folklore』リリース日におけるアメリカのもので、『Folklore』スタンダードエディション収録の16曲が16位までを独占。そしてもうひとつは8月5日水曜における日本のSpotifyデイリーチャートの動向。米津玄師『STRAY SHEEP』リリース日であり、米津玄師さんのほとんどの作品がハチ名義も含め、サブスク解禁された日でもあります。テイラー・スウィフトのように独占とはいかなかったものの、アルバム収録の15曲は42位までに全て登場し、うち7曲がトップ10を占めています。

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日本のデイリーチャートのカウント開始時間は0時ではない模様ゆえ、前日(8月4日)にも一部がランクインしていますが、それにしてもこの再生回数および順位はとんでもないものになっています。

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とりわけ『MIU404』(TBS 金曜22時)主題歌の「感電」は8月5日に日本のSpotifyデイリーチャートで首位に躍り出ており、近年サブスクで人気の曲と比べてもそのインパクトの大きさが解ります。

SpotifyはLINE MUSICと比べて順位が上がりにくい一方ロングヒットしやすい傾向があることはサブスクで人気の瑛人「香水」はSpotifyで未だ首位ならず? サブスクサービスを比較すると面白い特徴がみえてくる(5月17日付)で述べた通りですが、そのSpotifyで急上昇というのですから、米津玄師さんの作品を如何に多くの方が待ち焦がれていたかがよく解ります。

 

米津玄師さんの楽曲においては、『STRAY SHEEP』収録曲以外も大挙ランクインを果たしています。

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上記表における米津玄師さんの楽曲はハチ名義を含め44曲。これに『STRAY SHEEP』収録の15曲、さらにDAOKO×米津玄師「打上花火」(8月5日付 63位)、中田ヤスタカ feat. 米津玄師「NANIMONO」(同日付 132位)も含めれば、8月5日付においては61曲が200位以内に登場したことになり、200位までの占有率は3割を超えるのです。

 

冒頭で、”サブスクに関する歴史が変わろうとしています”と書きましたが、これは大げさではないはずです。

仮に『STRAY SHEEP』のセールスを優先するならば、サブスク解禁をずらすという施策を採ることができたはずです。実際に新作のみサブスク未解禁という歌手も少なくありませんが、『STRAY SHEEP』は発売日に同日解禁されることでチャート寡占というインパクトを残すことができました。しかもアルバムのCDセールスはビルボードジャパンの先ヨミ記事において既に50万を突破しており、サブスク解禁が所有を抑えることにはさほど至らないことが証明されたと言えるかもしれません。なお、ダウンロードセールスの先ヨミ記事は本日公開される予定です。

また、新譜も含めほぼ全ての楽曲を一斉解禁したことも大きいですが、新譜が旧譜を押し上げる効果があるというのはSpotifyデイリーチャート動向を見れば明らかです。

さらに米津玄師さんのサブスク解禁により、サブスク全体の再生回数が押し上がるという効果も生まれています。日本のSpotifyデイリーチャートにおける200位曲の再生回数は8月3日が19253回、4日が20140回に対し5日が23549回と躍進。米津玄師さん楽曲の再生回数は徐々に落ち着いてくるでしょうが、それでも今後200位曲の再生回数が2万を下回ることはなくなりそうです。

 

チャート寡占というインパクト、新譜による旧譜の押し上げを踏まえれば、新譜をリリースと同時にサブスク解禁することは歌手にとって非常に効果的。また米津玄師さんのサブスク登場により全体の再生回数が一気に押し上がりました。これらは他のサブスクサービスでも同様と思われます。となると、先述したような新作のみサブスク未解禁という施策を採ることが大きな意味を成さないことも、そもそもサブスク未解禁ということが如何に勿体ないかということも示されたように思います。”サブスクに関する歴史が変わろうとしています”と書いたのは米津玄師さんの動向や記録自体が理由でもありますが、この動向や記録がサブスクに明るくない方の背中を押す可能性もあると考えるゆえでもあります。

 

 

「感電」は、次週8月17日付ビルボードジャパンソングスチャートにおいて首位争いに絡む可能性があると米津玄師が遂にサブスク解禁、ビルボードジャパンソングスチャートへの影響はどうなる(8月5日付)にて指摘しました。『MIU404』の放送、ドラマ出演者との対談企画や日本人歌手初となる『フォートナイト』イベント参加等により、「感電」はSpotifyで初となるデイリー30万再生も見えてきたように思います。他方、次週はSexy Zone「RUN」が前作を大幅に超えるポイントを獲得するという指摘があり(チャートを予想、分析するあささんのツイートを参照。勝手ながら紹介させていただきました。問題があれば削除いたします)、「感電」は仮に1万5千ポイント以上を獲得しても首位到達は厳しいかもしれません。しかし、サブスク解禁がポイント前週比の下落率を抑えること(Aimer、ミスチル、米津玄師…サブスク等未解禁の影響がチャートアクションに響く例が今週明らかに(4月3日付)参照)を踏まえれば、「RUN」がデジタルに明るくならない限り、年間チャートでは「感電」が上回る可能性が高いでしょう。