イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

『関ジャム完全燃SHOW』で紹介された藤井風のアルバム『HELP EVER HURT NEVER』はチャート再浮上なるか? 行うべき施策を考えると共に、既存メディアへのお願いを記す

昨日の『関ジャム完全燃SHOW』(テレビ朝日 日曜23時)、これまでにない特集が組まれました。

放送にあわせて、自分がこれまで弊ブログで取り上げてきたチャートアクション等を、実況的な形で紹介してきましたのでよろしければTwitterを御覧ください。

 

 

今回このブログで取り上げるのは藤井風さん。ヒャダインさんが"ここ数十年の中で一番天才"と評しており、放送後には藤井風さんがトレンド入りを果たしています。その流れで、アルバム『HELP EVER HURT NEVER』が再浮上を果たすか、注目したいと思っています。

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5月リリースのファーストフルアルバム『HELP EVER HURT NEVER』はCDセールス、ダウンロードおよびルックアップの3指標から成るビルボードジャパンアルバムチャートを初登場で制覇。その後緩やかに降下しながらも、登場12週目となる最新8月17日付では41位となっており、好位置にとどまっていると言えます。『関ジャム完全燃SHOW』の放送終了時である8月17日月曜からの1週間が8月31日付チャート(8月26日発表分)に反映されるため、この週の動向をチェックし番組の反響を確かめる必要があります。また内容的に非常に素晴らしいため上がってほしいという個人的な思いもあります。

 

さてこの『HELP EVER HURT NEVER』、ロングヒットの可能性を以前示唆しました。

ただひとつ気になる点が。それは先述したチャートを構成する3指標の構成比。ロングヒット中の作品と比較すると。

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最新8月17日付ビルボードジャパンアルバムチャートでトップ20入りした作品のうち、『HELP EVER HURT NEVER』を上回る13週在籍している4作品のチャート構成比に注目(ビルボードジャパンのCHART insightにおいて、チャート構成比は直近のものが表示されます)。米津玄師『BOOTLEG』はニューアルバム『STRAY SHEEP』初登場週に伴い所有指標を中心に伸びたため他とは大きく異なりますが、他3作品はポイント全体におけるルックアップが4分の1を超えています。ルックアップとはパソコンにCDを取り込んだ際にインターネットデータベースへアクセスされる数であり、CDセールスに対する実際の購入者数(ユニークユーザー数)のほか、レンタルの利用者数を推測可能。つまり、『HELP EVER HURT NEVER』はレンタルの回数が他作品に比べてそこまで伸びていないだろうと予想できるのです。ならばこの状況を打破することが、藤井風さんのアルバムの再浮上、そしてさらなるブレイクにつながるものと考えます。

 

具体的には、今回の『関ジャム完全燃SHOW』で取り上げられたことを機にレンタルショップが面陳列やポップ等で見つけやすい場所に置くことが必要です。ただしそのような独自展開をする店は減ってきている印象ですので、もっと単純に言えば面陳列できるくらいの在庫の用意が必要でしょう。藤井風さんは9月4日、アルバムの最後を飾る「帰ろう」のミュージックビデオを公開する予定となっており、アルバムの訴求を長期に渡り行っています。であれば尚の事、それに呼応した売場展開が求められるところです。

さらなるブレイクにつながるにはメディアへの露出も必要かもしれません。とりわけ地上波テレビ番組については、視聴率は高くないとしてもバズを起こしやすいという性質があります。今回ヒャダインさんが取り上げたことでいわゆる”見つかった”状態になったのですから、出演への(特に、テレビ番組側が打診するという意味での)ハードルは低くなったと思われます。今のコロナ禍の状況を踏まえれば難しいかもしれませんし、何より本人が出演を希望するかは不明ですが、テレビ出演は大きなステップアップとなるはずで、それがレンタル増にもつながり相乗効果をもたらすでしょう。

勿論、購入していただくほうがいいに越したことはないのですが、サブスク利用率はそこまで高くありません(し、中には抵抗を抱く方もいらっしゃると聞きます)。ならば既存の媒体で接触してもらうことは必要です。そこからコアなファンに昇華し、購入につながることはあるはずです。

 

 

最後に、これはテレビやラジオといった既存メディアへのお願いを記すならば。

 

ビルボードジャパンソングスチャートを追いかける身として、所有と接触指標で構成されるこのチャートが時代に即しブラッシュアップ(チャートポリシーを改正)し続けたことで、どんどん社会的なヒットの鑑となっています。昨年の『NHK紅白歌合戦』においてはCDセールス以上にダウンロードやサブスクでの人気に長けた(そしてその勢いがCDセールスにも反映されていった)、Official髭男dismやKing Gnu菅田将暉さんやLiSAさんが出演していましたが、CDセールスが高くないからといって彼らの出演に異議を唱えた方はほぼ皆無だったはずです。

今年に入り、コロナ禍による自粛の影響で尚の事TikTokに注目が集まりましたが、しかしTikTokがヒットの源泉となる傾向は昨年のリル・ナズ・X feat. ビリー・レイ・サイラス「Old Town Road」を中心に海外では既にみられていたもので、日本でようやくとも言えるでしょう。となると、TikTokの流行を先取りしたサブスクチャート(ビルボードジャパンソングスチャートにおいてはストリーミング指標として反映される)を”知らないから紹介しない”というのは古いと思うのです。昨日の番組冒頭でロバート秋山竜次さんがLINE MUSICの月間チャートを”闇のランキング”と形容していたのは、その後様々なことが明らかになるにつれて得られる気付きをより増幅させるための前フリだったのかもしれませんが、さすがに”闇”という形容は曲や歌手、そしてその作品を好んでいた方に失礼ではないでしょうか。

 

ようやくサブスクチャートの特性等が地上波テレビで大きく取り上げられるようになりました。複合指標から成るビルボードジャパンソングスチャートでこのサブスクが大きな影響力を持つようになったわけで、ならば知名度は高くないものの曲は認知されているという方々を積極的にフックアップすることこそ既存メディアの役割であり、矜持なのではないかと思うのです。