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米ビルボードソングスチャートを制する可能性が高いBTS「Dynamite」、さらに翌週も好位置を目指した戦略を実施…キーワードは親しみやすさ?

日本時間の明後日発表される9月5日付米ビルボードソングスチャートにおいて、8月21日金曜にリリースされたBTS「Dynamite」が初登場で首位に立つ可能性が高まりました。チャート予想者が複数、今回の首位の可能性を示唆しているのです。あくまで予想段階ではありますが、実現すれば韓国の歌手にとって初となる米ビルボードソングスチャート制覇となります。

今回のBTS「Dynamite」ついては、フィジカルのリリースやリミックスの用意、さらにはリリーススケジュール通りに公開された別バージョン(Bサイド)のミュージックビデオ登場等により、リリース初週におけるストリーミングおよびダウンロード指標の強化が行われてきました。9月5日付米ビルボードソングスチャートの対象期間はストリーミングおよびダウンロードが8月21~27日、ラジオエアプレイが8月24~30日となります。

 

BTSはこれまで、「On」(2020)の4位が米ビルボードソングスチャートにおける最高位でした。ストリーミングでは以前より下がることもあれ安定した人気を博すと同時に、ダウンロードは伸び続けています。

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初登場こそ高位置につけるもの翌週は所有指標であるダウンロードが急落、ストリーミングもやや大きく数値を落とす傾向にあるため、最も上昇度の低いラジオエアプレイで2指標をどれだけ補填できるかが登場2週目の鍵。BTSをはじめとする主なK-Popアクトがロングヒットに至れないのは、ラジオエアプレイが十分ではないために瞬間風速的なものになってしまうことが原因と言えます。

 

この克服のために、BTSは「Dynamite」において登場2週目の各指標強化に取り組んでいることは前週のブログにて記載した通り。日本時間の明日31日に開催されるMTVビデオ・ミュージック・アワードの出演に伴うBTS熱の持続(および、おそらくここでのパフォーマンス映像が放送から程なく公式動画としてYouTubeにアップされる可能性が高く、そうなればストリーミングも強化されます)が主な内容ですが、BTSはさらに8月28日金曜、新たなリミックスバージョンを投入してきました。

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前週のブログでもOfficial BTS Music Store(URLは bts-dynamite.us)における「Dynamite」商品一覧のキャプチャを紹介しましたが、「Dynamite」においては新たにトロピカル、プールサイドと名付けられたリミックスが登場。オリジナルおよびそのインストゥルメンタル、アコースティックさらにEDMと合わせた6バージョンとなり、ダウンロードやサブスクサービスではこの6バージョンがデラックスエディションとしてまとめられています。

ディスコティークなオリジナルに対し、それぞれのリミックスは単なるオケの差替ではなく各ジャンルに沿った工夫がなされ、今の時代の雰囲気をまとったものとなっています。一方でオリジナルバージョンにおける、特にアウトロの”ジャジャジャジャン”というアレンジは一聴すると格好悪く感じられるかもしれませんが、とりわけラジオリスナー(他のメディアよりも以前からあるメディアを利用する方、という表現のほうがしっくりくるかもしれません)に対し、親しみやすく聴こえるのかもしれませんね。

今回の「Dynamite」各バージョンが安価で売られていることも、親しみやすさのポイントと言えるでしょう。実は前週の段階で見逃してしまっていたのですが、前週そして現段階でもOfficial BTS Music Store(URLは bts-dynamite.us)では「Dynamite」各バージョンが0.69ドルで売られています。これはiTunes Storeでも同様です。

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日本時間の8月30日7時半の段階での米iTunes Storeソングスチャートをみると、BTS「Dynamite」が11位までに6バージョンランクイン。他の曲が0.99~1.29ドルなのに対し、安価設定が際立っています。これにより手に取りやすくなった、親しみやすくなったと言えるかもしれず、「Dynamite」は全編が英語詞であることも含めて、アメリカにおけるBTS入門編として最適な作品であると言えるかもしれません。

最近のチャート対策として、ダウンロード指標上昇につながるフィジカル施策が主に用いられてきました。歌手のホームページにてレコード等フィジカルを販売し後日それらが届くのとは別に購入段階でダウンロードが可能となることで、フィジカルとダウンロードの双方が購入段階でカウントされるというのがこの施策の内容ですが、米ビルボードでは10月上旬よりフィジカル施策を実質無効とするとアナウンスしています。一方で、8月15日付米ビルボードソングスチャートを制したハリー・スタイルズ「Watermelon Sugar」はフィジカル施策も用いながら安価販売も実施したことでダウンロード指標の急伸に成功させています(なお現在は1.29ドルで販売)。もしかしたら今後、この安価販売が再度ダウンロード指標対策の主たる手段に踊り出るかもしれません。

 

9月12日付米ビルボードソングスチャートの対象期間はストリーミングおよびダウンロードが8月28日~9月3日、ラジオエアプレイが8月31日~9月6日。BTS「Dynamite」はMTVビデオ・ミュージック・アワード出演を追い風に、そして追加リミックスと安価販売を武器に、登場2週目に好位置をキープする戦略を採ってきました。チャートの動向が楽しみです。