イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

9月21日付ビルボードジャパンソングスチャートでも目立つアイドル曲急落の理由とは、そしてNiziU「Make you happy」再燃から今後のヒントを探る

毎週木曜は、前日発表されたビルボードジャパン各種チャートの注目点を紹介します。

9月7~13日を集計期間とする9月21日付ビルボードジャパンソングスチャート(Hot 100)はYOASOBI「夜に駆ける」が8週ぶり、通算5週目の首位を獲得しました。

前回首位を獲得した7月27日付以降はSixTONES「NAVIGATOR」→嵐「カイト」→Sexy Zone「RUN」→Twenty★Twenty「smile」→関ジャニ∞「Re:LIVE」→JO1「OH-EH-OH」→STU48「思い出せる恋をしよう」と、全てアイドルグループが制覇。しかし翌週の順位は「NAVIGATOR」および「カイト」が7位にとどまった以外はトップ10をキープできず、前週首位の「思い出せる恋をしよう」に至っては100位以内にもとどまっていません。

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この急落は前週予想した通り、CDセールス加算初週に他指標が追いつかないためではあるのですが(ジャニーズ事務所所属歌手においてはダウンロードやストリーミング、曲によっては動画も未解禁であることからデジタル以外の指標に頼らざるを得ません)、さらに初週のCDセールスが前作の半分以下だったことが気になります。今週同指標を制し総合でも9位に入ったBOYS AND MEN「Oh Yeah」も同じ状況です。

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チャート構成比も前週のSTU48「思い出せる恋をしよう」同様にシングルCDセールスが全体の9割以上を占めていますが、CDセールスも「思い出せる恋をしよう」同様に前作から半減(「ガッタンゴットンGO!」の初週売上が115241枚(1月6日付)に対し、今週の「Oh Yeah」の売上は55996枚。リンク先はCDセールスの記事)。6月以降にCDリリースを再開したジャニーズ事務所所属歌手が新型コロナウイルスに伴う緊急事態宣言の発令以前と変わらないかもしくは売上を伸ばしている一方、ジャニーズ事務所所属歌手以外のアイドルにおける急落が気になるのです。

これは推測の域を出ませんが、メディア露出の多いアイドル(それこそジャニーズ事務所所属歌手はその代表格)以外においては、握手会やイベント等ファンとの密接な接触ができる機会をCDの特典として提供することをセールスの起爆剤としていたと思われます。それがコロナ禍により自粛せざるを得なくなったことで、接触ができなくなったことを嘆くファンがCD購入を止めたのではないかと。CDを売れば数十万のセールスが確実に見込める乃木坂46欅坂46が最新曲をデジタルでのみリリースしたことも、このことが背景にある気がします。

 

その背景ゆえでしょうか、先月以降LINE MUSICの再生回数キャンペーンが増加しているように感じていましたが、CDセールスが見込めなくなったことでデジタルにて補完するという動きの表れなのかもしれません。キャンペーンの商品がグッズであることが多く、より再生回数が多いとより当選確率がアップという文言が熱意を持った方の参加意欲を掻き立てるだろうことを踏まえると、アイドルやK-Pop等熱心なファンの多いジャンルとLINE MUSICの再生回数キャンペーンは相性が良いだろうことが考えられ、CDセールスを主軸としてきたアイドルの運営側がデジタル再生回数増加を狙うのは自然なことと言えそうです。

 

 

このLINE MUSICキャンペーンを巧く活用し、今週ステップアップに至れたのがNiziU 「Make you happy」。前週より順位を4つ上げ、7月13日付以来となるトップ3へ返り咲きを果たしました。

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総合ポイントは前週比121.3%と大きく伸びていますが、特に牽引したのがストリーミング指標。再生回数は前週比134%を記録しています。

上記記事にあるように、NiziUの初となるテレビ番組でのパフォーマンスが伸びた要因と言えますが、この前後にLINE MUSICにおける再生回数キャンペーンを投入したことが功を奏したはずです。

キャンペーン期間は9月7~13日、すなわち最新9月21日付ビルボードジャパンソングスチャートと完全に重なります。『THE MUSIC DAY』以外にも期間中にはNiziUをフィーチャーした番組が複数放送され彼女たちに注目が集まったわけですが、そのタイミングでキャンペーンを投入することでテレビ出演効果を最大化することに成功したと言えるでしょう。

LINE MUSICの再生回数キャンペーンは主に配信開始日を起点として行われている印象がありましたが、NiziU「Make you happy」からはキャンペーン開催期間に特段決まりがないことが判ります。アメリカではビルボードソングスチャートでの上昇を狙うべくピンポイントでiTunes Store安価販売が実施されることもあり(0.99ドルもしくは1.29ドルの通常価格を1週間のみ0.69ドルとして売り出す手法。ただし最新週で2位のBTS「Dynamite」は3週続けて0.69ドルとこれまでほぼみられない手法を用いています)、タイミングを見極めたキャンペーンの投入は今後増えていくのではないでしょうか。

 

元来NiziU「Make you happy」はCDリリースされていないため、CDセールスおよびルックアップを抜いた6指標で勝負をせざるを得ませんでしたが、接触指標群が安定したことで最新チャートでのストリーミング爆発に繋がったと言えます。今週はトップ10入りした曲のうちCD未リリースが6曲、しかもトップ3は全て未リリースであることから、所有指標をCDに頼らず且つロングヒットに至る曲の多さが伺えます。今日の前半で紹介したアイドルについては(そして所有指標が安定するジャニーズ事務所所属歌手の作品においても言えますが)、CDセールスに頼らず如何に存在感を出し、総合的な売上面でコロナ禍以前と変わらぬ状況を築き上げていくかの真価が問われていると感じます。今回のNiziU「Make you happy」の動向が何かしらのヒントになるのではないでしょうか。