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チャート愛好家。ビルボードジャパンや米ビルボードのソングスチャートなどを紹介します。

米ビルボードが新設した2つのグローバルチャートの特徴とは? ビルボードジャパンや日本の音楽業界に対する願いを合わせて記す

YouTube取扱に関するチャートポリシー変更のタイミングで、ビルボードジャパンのポッドキャスト宛に(”#ビルボードポッドキャスト”と付けて)質問したことについて。もしくは下記エントリーでも疑問を掲載し『文章化してほしい』と記しました。

そして昨日、ビルボードジャパンのチャート・ディレクターを務める礒崎誠二さんがその文章化の報告をアナウンス。非常に解りやすい内容となっています。

YouTubeデータの細分化と一部がストリーミング指標に組み入れられること、細分化されたものの詳細な説明が行われ、更に米ビルボードに倣い次年度初回(12月2日発表 12月7日付)からUGCについてカウントから除外することをアナウンスしています(代わりにUGCに関してば別途チャートを新設する予定)。自分が求めていた文章化が叶えられ、それも本当に解りやすい形で記載されていました。心より感謝申し上げます。

 

 

さて今回は、ビルボードジャパンのFacebookでも触れられていたグローバルチャートについて取り上げます。米ビルボードは今週、世界200以上の地域のデータを基に、グローバルソングスチャート(Global 200)およびグローバルソングスチャートから米を除いたチャート(Global Excl. U.S.)を新設しました。これらチャートは『主要デジタル・プラットフォームにおける定額課金型(サブスクリプション)と広告支援型の公式オーディオとビデオ・ストリーミング、そしてダウンロードにそれぞれ比重をつけて算出し、ランク付けしたもの』となります(『』は下記記事より)。

2つのチャートは200位まで用意されているものの、100位より下は米ビルボードの有料会員のみ見られる仕様に(ただし上記記事ではいくつかの順位が判明)。そこで無料会員でも確認可能な100位までをチェックし、米ビルボードソングスチャート(Hot 100)と比較してみましょう。

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左から順にHot 100、Global 200そしてGlobal Excl. U.S.。いずれも9月19日付であり、また今週Hot 100で29位に初登場を果たしたSZA feat. タイ・ダラー・サイン「Hit Different」がGlobal 200では36位に入っていることから、Global 200の集計期間はHot 100に準ずるものと考えます。Global Excl. U.S.では「Hit Different」は100位以内にランクインしていないものの、同チャートの”米を除外”という性質上このチャートの集計期間も同じであり、すなわち米における集計期間は9月4日金曜からの一週間だと思われます。

 

3つのチャートについては指標の比重が若干異なります。

広告支援型の公式オーディオやビデオストリーミングといったいわばユーザーが無償で享受できる分の比重が、Hot 100とGlobal 200では大きく異なり、Global Excl. U.S.では尚の事無償サービスの比重が軽くなっています。 

Hot 100においてはダウンロードと各種ストリーミングにラジオエアプレイが加わりますが他チャートは含まないため、Hot 100→Global 200ではカントリー曲が一層されます。ラジオエアプレイはデジタルに比べて上昇までのスピードが遅く一方では長く残りやすい、またヒップホップが強くなくカントリーが得意とする指標であるため、ラジオエアプレイの除外はカントリーにとって打撃と言えます。

またGlobal 200そしてGlobal Excl. U.S.は新設されたチャートであり、今後リカレントルールを敷くかは不明です。リカレントルールとは一定期間以上ある順位を上回って在籍し続けた曲がその順位を下回ればチャートから除外されるというもので、チャートに新しい曲がランクインしやすくばなるための措置なのですが、新設2チャートではHot 100で除外された曲が登場しているのが面白いところ。リル・ナズ・X feat. ビリー・レイ・サイラス「Old Town Road」やエド・シーラン「Perfect」、果ては「Shape Of You」の登場には驚かされます。ビルボードジャパンのソングスチャートではリカレントルールが存在しないため「Shape Of You」がチャートインし続け、疑問の声があったことを受けて以前下記エントリーをアップしたのですが、新設されたチャートを見る限りロングヒットを支えるのは日本だけではないことが判ります。

 

Global 200→Global Excl. U.S.においては、ヒップホップのランクダウンと、一方でラテンの上昇が特徴的。ラテンの躍進は昨日のビルボードジャパンによるランクイン歌手の地域別の割合で示されている通りです。

邦楽については、Global 200における100位以内のランクインがYOASOBI「夜に駆ける」(80位)のみだったのに対し、Global Excl. U.S.では同曲の37位を筆頭に複数ランクイン。米津玄師「感電」(46位)、YOASOBI「群青」(56位)、あいみょん「裸の心」(58位)、瑛人「香水」(79位)、NiziU「Makeyouhappy」(84位)と6曲が100位以内に入っています。『“Global Excl. U.S.”には9アーティストによる12曲がチャート入りしている』とあるため、101~200位には邦楽がさらに6曲入っていることが判ります(『』内は上記記事より)。Global Excl. U.S.は米での流行を最も差し引いたものであっても米英の強さが目立つのですが、歌手の出身別でみるとグローバルなラインナップであることが把握できますし、日本の歌手が入ることで世界における知名度向上にもつながるはずです。

Global Excl. U.S.では韓国の歌手も躍進していますが、100位以内のランクインはBTS「Dynamite」を皮切りに5曲と、日本より少ないのが印象的。とはいえ米チャートではその「Dynamite」や、BLACKPINKとセレーナ・ゴメスによる「Ice Cream」も入っており、K-Popは海外での成功で知名度が向上し世界中で聴かれるようになった印象があります。一方で邦楽については、ほぼ日本市場だけで売上を稼いでいると言えるでしょう。SpotifyにおけるBTSの200位以内ランクイン地域と(ランクインした歌手で最も多くの地域で聴かれている)YOASOBIのをみると、地域数の差に驚かされます。日本自体の市場は大きいものの、あまりに閉鎖的と言える状況が理解できるはずです。

 

 

今回新設された2つのチャートにおける願いを記すならば、どのようにデータが供給されているのかがまずは気になります。先に9月19日付3チャートは9月4日金曜からの1週間が集計対象期間だろうと推測しましたが、仮に日本のデータがビルボードジャパンで取りまとめたものによるものならば、ビルボードジャパンが9月9日に発表した9月14日付ソングスチャートが基礎になっており、その集計期間は8月31日月曜からの1週間。すなわち日本のデータにおいては4日分古いことになるわけです。またデータ供給元のいくつかがビルボードジャパンのFacebookで紹介されていますが、日本独自で展開するLINE MUSICやAWA等が含まれているのかが解りかねます。記載例の中に日本未展開のTIDAL等があるため、地域限定のサブスクサービスについても情報を拾い上げていると思われますが、集計期間の明確化共々この点についてもビルボードジャパンや米ビルボードで説明してほしいと願っています。

 

そしてもうひとつ。日本と海外ではリリース日が異なります。CDリリースに比重が置かれている日本ではそのCDリリースが基本的に水曜となっていますが、海外ではCD需要の減少とデジタルでの一斉配信化により数年前から金曜が標準的なリリース日となりました。ビルボードジャパンソングスチャートは構成8指標がすべて月曜を集計の起点としていますが、これでは集計期間の後半にリリースされる海外作品が不利になるだろうという懸念があります(そのことはここで幾度となく記載しています)。しかし今回のGlobal 200等の新設により、仮に日本のデータをビルボードジャパン発とすれば4日分”鮮度が落ちる”と言えるわけです。金曜リリース作品のインパクトを高めるためにも、ビルボードジャパンの各種チャートを金曜起点にすることはできないでしょうか。尤もこれはビルボードジャパンのみならずCDの比重が高いランキングを送出するオリコン、そして音楽業界全体が取り組まなければならない課題ではあるのですが、CDも金曜リリースで統一されればCDショップの土日の集客力は上昇するものと考えるゆえ、尚の事変更すべきと思うのです。

ちなみにその日本で未だに強いCDセールスは新設されたチャートから除外されました。米でもフィジカルは存在しますが、CD専門店が日本ほど存在せずフィジカルを売る場所も歌手のホームページやAmazon等であること、歌手のフィジカル販売ではCDよりもレコードやカセットテープが作られているだろうこと(たとえばBTS「Dynamite」はCDのみ制作されていません)、そして今年に入り流行したフィジカル施策を米ビルボードが10月以降実質無効化することもあり、CDはカウントから除外して然るべきとの措置を採ったのだと考えます。米ビルボードでは今年に入り、フィジカル施策を用いてソングスチャートの1位に初登場しながらも翌週には急落する状況が目立っていたことを踏まえれば、フィジカルセールスが大きく影響しすぎることがチャートの健全化を妨げると考えたとしてもおかしくないでしょう。そしてこのフィジカルに強い楽曲の瞬間風速的なヒットはビルボードジャパンソングスチャートとよく似ているかもしれません。日本においてはさらに、CDセールスが強い曲にはデジタル未解禁のものが多く、たとえば米ビルボードが新設チャートのプレイリストをサブスクサービス等に用意して、収録されていない曲がある、いわば”穴がある”とクレームが来る可能性があるでしょう。その穴の原因が日本のデジタルに対する後ろ向きな姿勢だと知れば、世界の方々はどう思うでしょうか。

ビルボードが新設チャートにおいてCDセールスを除外したことの詳細な理由、それに対するビルボードジャパンの考えを伺いたいと同時に、ビルボードジャパンソングスチャートの集計開始日の金曜への変更について願っています。

 

 

たとえば本日リリースされた嵐「Whenever You Call」が、日本時間の9月29日発表予定となる10月3日付米ビルボードGlobal 200そしてGlobal Excl. U.S.にランクインするものと考えます。仮にこの曲が上位に入ることがあれば、そしてその勢いが持続すれば、日本においてCDセールスに特化しすぎない、またデジタルでのセールスを前向きに検討する起爆剤となるのではないかと思いますし、それを期待したいところです。