イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

CDでのアルバム訴求、今の時代に即した印象的な3作品

CDという存在がどうなっていくか、気になります。シングルにおいてはアイドルやK-Popアクト等、万単位の売上が見込める歌手以外のリリースが減っている印象がありますが、アルバムにおいてはジャンルに関係なくCDでリリースすることが減っていく予感がします。だからでしょうか、サブスクが興隆する今の時代にあって敢えてフィジカルを用意することで、CDはコアなファンのコレクターズアイテムとしての意味合いを強めていると感じています。

 

 

EPとしてリリースされるYOASOBIの初CDは1種のみ、そして完全生産限定盤。以前出演した『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日 日曜23時)にて『NHK紅白歌合戦』出場への意志を表明しており、紅白出場をEP売上増につなげるものと考えます。完全生産限定盤ながら店舗での販売も予想されるため、店舗側は紅白出場を見越した上で入荷数に強気になることもまた考えられます。いわゆる”夜好性”と呼ばれる歌手のフィジカルリリースでは小説やカセットテープという前例もあり(ヨルシカ『盗作』(2020)については音楽ナタリー参照)、音楽の世界観に関連するアイテムを付属する姿勢は今後のムーブメントとなることでしょう。

 

サブスクでプレイリストを作ればベストアルバムやオムニバスは極端に言えば不要だとする声もあるかもしれず、それを踏まえてかリリース後しばらくはサブスクやダウンロードすら解禁しないという歌手も未だ存在します。そんな状況を理解した上で、『極端な話、このCDを買わなくても、サブスクとかでプレイリストに登録してもらえれば同じ曲を聴くことができるので』と言っていたのが、ピヤホンを監修しピヤホン同梱オムニバスCDを手掛けた凛として時雨ピエール中野さん。このCD収録曲がジャンルも多様で、すべての曲がピヤホンでの聴取によりさらに素晴らしく聴こえてくるのだろうという期待を抱かせます。

先の『』内は上記インタビュー内でのものですが、ピヤホンで聴くことによって『いざ聴いてみたら、CDも欲しくなると思いますから』『「CDで聴く」という体験に改めて触れてみてほしい、という思いはありますね』と語っているのが印象的。サブスク等の十分な解禁がライト層をコアなファンに昇華させることはOfficial髭男dismやKing GnuのCDセールスの堅調から明らかですが、ピヤホン同梱CD自体や収録された歌手自身のCDもそうなっていくのかもしれません。下記はピヤホン同梱CD収録曲のひとつで、ダンサブルなサウンドとの相性の好さを想起させます。

 

SKY-HIさんのベストアルバムは先月リリースされ、お名前入り受注生産限定盤は2万円に別途消費税という価格の高さはあれど、同梱内容の豪華さや購入者の名前を入れてくれる特典はコアなファンにとって価値があると考えるに十分です。

そのベストアルバムリリース後、ベストアルバム収録曲を基にしながら新たにレコーディングした声等を交えたプレイリストを公開しています。

曲の新たな聴き方を提示することで曲の多面性等を新たに発見できるのみならず、CD購入後もサブスク再生により収益がきちんとSKY-HIさん側に入っていくのです。そしてピヤホンCDでも言及したように、サブスクからCD購入につながること、ライト層からコアなファンに昇華することも考えられます。こういう提示の仕方は実に面白いのではないでしょうか。

 

 

冒頭で 『サブスクが興隆する今の時代にあって敢えてフィジカルを用意することで、CDはコアなファンのコレクターズアイテムとしての意味合いを強めている』と書きましたが、そのコレクターズアイテムとしての価値をさらに高めさせてくれるのが同梱されるグッズであり、そしてSKY-HIさんのプレイリストからはCD購入への促進がみてとれます。これらはむしろCDへの回帰と呼べるかもしれません。尤もその場合、デジタルプラットフォームへの十分な解禁が大前提になります。