イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

「カイト」に続きアルバム『This is 嵐』がデジタル未解禁であることへの疑問

検索エンジンからこのブログへたどり着いた方がどのブログエントリーをチェックしたかというのが、はてなブログでは解る仕組みになっているのですが、以前からアクセス数が多かったこちらのエントリーが今月になってさらに浮上しています。

嵐「カイト」はリリースから3ヶ月経った今もデジタル未解禁のままですが、同曲が収録され11月3日にリリースされたアルバム『This is 嵐』もまたデジタルリリースされていません。

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(デジタルプラットフォームでの解禁状況を紹介するためキャプチャを貼付しました。問題があれば削除させていただきます。)

本日現在のSpotifyにおける嵐のページで、最新リリースとして表示されるのはアルバムからのリード曲「Party Starters」であり、オリジナルアルバムも『「untitled」』が直近として表示。また、嵐の公式Twitterにおいては『This is 嵐』のリリースに言及している回数が極端に少なく、下記が唯一のつぶやきとなっています。

直前にリリースされた「Party Starters」が、各デジタルプラットフォームでのつぶやきの引用リツイートの形も含め多く紹介しているのとはあまりにも差があるのですが、これは冒頭で紹介したブログエントリーでも言及した、「カイト」とその5日前にデジタルリリースされた「IN THE SUMMER」との大差を彷彿とさせます。

SNSにおいて「カイト」が「IN THE SUMMER」と比べて圧倒的に紹介されていないことは不自然ですが、仮に「カイト」の未デジタル化が既定路線だったならば、敢えてつぶやかなかったと捉えるのが自然でしょう。SNSとサブスク等の親和性を踏まえれば、つぶやかれた曲がサブスクになかったときのダメージは大きいためつぶやかないほうが得策となり、そうすればデジタルで存在しないことが気付かれずに済む可能性が高まります。

以前このような仮設を立てたのですが、しかし今回はアルバムリリース日に巨大イベントを開催し、関連ワードが同日のTwitterでいくつもトレンド入りを果たしたこと等を踏まえれば、アルバムリリースの旨を伝えないことは機会損失では、アルバムのデジタル未解禁に疑問を抱く方は少なくないのでは…そう捉えるのが自然なことではないでしょうか。

配信を観た方の中にはコアなファンではないものの作品等が気になるというライト層も多数存在したはずで(ただしファンクラブ会員以外が観られるコンテンツは制限されていましたが)、『アラフェス2020 at 国立競技場』を開催した翌日の日本におけるSpotifyデイリーチャート(11月4日付はこちら)では「Party Starters」(66→57位)、「Whenever You Call」(90→82位)、「Turning Up」(117→93位)、「Love so sweet」(152→126位)、「IN THE SUMMER」(200位圏外→162位)、「Happiness」(200位圏外→187位)が200位以内にランクインし、且つすべての曲が前日から順位を上げています。配信を機に接触や所有行動を起こす方が少なくなく嵐の楽曲への興味が高まった以上、デジタル先行曲以外がイベントで披露されなかったとしても『This is 嵐』がデジタル未配信のままであったことは勿体なかったのではと思うのです。コアなファンはその多くがCDを購入するものと考えるため、デジタル解禁でライト層を惹き付けコアなファンに昇華させる意味でも、デジタル化は必須だったと思うのですが。

 

Twitterにおける一部リアクションに納得したのですが、『This is 嵐』の説明欄においてデジタル解禁以降の嵐のアプローチの変化やチャレンジ等が今作に収められたと謳うならば、今作をデジタル化していないということは矛盾と言われてもおかしくないと思うのです(アルバム紹介ページはこちら)。今年新たにデビューしたSixTONESが”ジャニーズをデジタルに放つ新世代。”と謳われながらストリーミングのみならずダウンロードも解禁していないことと同様の違和感を覚えます。

また、デジタル未解禁は海外のライト層、そしてファンにも影響を及ぼします。米ビルボードが9月に新設した2種のグローバルチャートで「Whenever You Call」が100位以内に、「Party Starters」は最新11月14日付Global Excl. U.S.で54位に初登場を果たしており(他方でGlobal 200では100位以内に入らず)、また「Whenever You Call」は米ビルボードがグローバルチャート紹介の記事にて取り上げたこともあり、獲得ポイントの大半が日本からのものであったとしても同チャートにランクインしたことで海外からの注目度が少なからず上昇したと思うのですが、たとえば海外のiTunes Storeをみても『This is 嵐』のダウンロードは行われていません。Twitterにおけるリアクションにはファンの方からのデジタルシングルをCD化してくれて嬉しいという声もみられますが、CD自体の流通量が減った海外のファンやライト層はどうやってアルバム音源を手に入れるのだろうと気に病んでしまいます。

 

 

『This is 嵐』の未デジタル化には何かしらの目的や意図があったと考えられます。おそらくは「カイト」で推測した際と同様に高いCDセールスの確保が目的ではとは思うものの、厳密な理由は本人たちでなければ解らないため推測の域を出ません。ただひとつ言えることは、デジタルを推進してきた歌手が作品によってデジタルで出す/出さないを分けているという状況はフレンドリーとは言い難いのではということです。