イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

動画、カラオケ…ジャニーズ曲の接触指標群からみえてくる、ライト層獲得への疑問

毎週木曜はその前日に発表されたビルボードジャパンソングスチャートについて注目点を紹介しています。最新11月16日付においては、最後にこのようなことを書きました。

ちなみに「NOT FOUND」においては今週、動画再生指標が2週ぶりに300位以内に復活。同指標は10月19日付でミュージックビデオ公開効果により40位に登場していますが、仮にその時の勢いが今週にも反映されていたならば、「炎」を逆転できた可能性があったのかもしれません。そしてこの動画再生指標の推移から、特にジャニーズ事務所所属歌手の曲において獲得ポイントを上乗せするためのヒントがみえてくるのではないかと考えています。

仮にミュージックビデオがダウンロードやCDリリースに先立って公開されたとしても、動画再生指標はダウンロード等の解禁タイミングで伸び、ロングヒットを続ける曲は高値安定する傾向があるのですが、「NOT FOUND」は公開のタイミングが現時点で最も順位が高く、前週は一旦300位を下回りました。これに違和感を覚えた次第です。

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上記チャート推移(CHART insight)において黒の折れ線が総合チャート、赤が動画再生指標の順位を示します。注目作品の動画再生が思うほど浮上しない要因にはいくつか理由がありますが、ショートバージョンのために接触者が(何度も)再生しないこと、またそもそもその動画の存在が気付かれていないことも要因と言えるでしょう。ショートバージョンにおける再生回数問題についてはLiSA「紅蓮華」をはじめとしてここで幾度となく取り上げていますが、気付かれていない問題においては、ジャニーズ事務所所属歌手はすべてデジタル未解禁と思われているゆえにYouTubeに上がっていないという認識が少なからずあるのかもしれません。その仮定が正しいとすれば、「NOT FOUND」のような解禁初週における動画再生指標の上位進出はコアなファンによる再生が主であり、そのコアなファンがCDリリースのタイミングでCDに同梱される映像盤に視聴先を移行することで、CDセールス初加算週の動画再生が解禁時より減るという流れもまた生まれているのかもしれません。ジャニーズ事務所所属歌手ではショートバージョンながらミュージックビデオをアップする方自体少ないのですが、この”動画再生指標がシングルCDセールス初加算週のタイミングで伸びない問題”はKing & Prince「Mazy Night」でも見て取れます。

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動画再生指標を主に支えているのはコアなファンではないか、との仮説を立てましたが、コアなファンが支える指標はカラオケにおいても同様ではないかと捉えています。

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今年デビューしたSixTONESおよびSnow Manのデビュー曲のチャート推移において、動画再生指標は総合チャートの最上位(イコールシングルCDセールス初加算週)に近いところで最も高い位置につけており、この点ではSexy Zone「NOT FOUND」のような事態は起きていません。

他方、濃い緑で表示されるカラオケについては、SixTONES「Imitation Rain」はシングルCDセールス初加算週に、Snow Man「D.D.」はその翌週に300位以内に登場すると、それぞれその翌週には100位以内に登場。解禁から間もない急浮上は、2週目の首位獲得時にカラオケ指標が18位に初登場したLiSA「炎」を思わせます。

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しかし、「Imitation Rain」のカラオケ指標100位以内在籍期間は6週、「D.D.」は5週のみ。火が付くスピードの速さは特筆すべきですが、通常カラオケ指標は下降時もなだらかであるのが特徴であり、この早々のランクダウンは異質な動きと言えるのです。これはおそらく、コアなファンによる盛り上がりが反映されている(もしくは「Imitation Rain」についてはソングライターであるYOSHIKIさんのファンも含まれるものと考える)一方で、ライト層へ広く浸透しているとは言い難いからではないかというのが自分の見方です。仮に浸透していたならば、より長く100位以内に在籍したと言えるでしょう。

 

これら動画再生およびカラオケといった接触を示す両指標からは、コアなファンの熱心さが持続しないという点も見えてきます。逆に、中長期的にヒットする作品のチャート推移をみれば、如何にライト層を惹き付けているのかもまた解るのではないでしょうか。

 

 

ジャニーズ事務所所属歌手の作品は、コロナ禍においてもシングルCDセールスが極端に下がることはなく、またTwitter指標の堅調やルックアップの上昇、ラジオエアプレイの好位置でのランクインもみられます。これらはコアなファンの多さだったり、ビルボードジャパンソングスチャート対策がより強く反映された結果と捉えることが可能であり、それゆえミュージックビデオの解禁直後にアクセスしたり、解禁間もないカラオケで盛り上がるというのもまたコアなファンによるアクションと考えるのが自然でしょう。

その一方で、シングルCDセールスやラジオエアプレイの早々なランクダウンを、接触指標である動画再生やカラオケもなぞるのは不自然と言えます。サブスクの再生に基づくストリーミングも含め、接触指標はコアなファン以上にライト層の盛り上がりに支えられているため、接触指標の早々なダウンはライト層への浸透度の高くなさを示していると言えるでしょう。

ではその弱点を克服しようと、コアなファンが毎週のようにカラオケに行って歌い続けようですとか、YouTubeでループし続けようという考えがもしも真っ先に出てくるのであれば、それは正しいとは言えないと強く断言します。なぜならそれら行為はコアなファン自身の負担を時に過剰に強いかねないため。それら行為が全く意味のないことだとは思いませんが、より広めるための活動は何かを探ることのほうが圧倒的に好いはずです。ショートバージョンながらミュージックビデオをYouTubeでアップしていることを広く世間に浸透させることも必要でしょうが、ミュージックビデオをフルでYouTubeに解禁すること、そしてやはりデジタル全体の解禁を行い、ライト層へ裾野を広げることが最優先ではないでしょうか。

 

 

 

2020年度のビルボードジャパン年間チャートは12月4日金曜に公開されます。

SixTONESSnow Manのデビュー曲も上位に登場すると思われますが、シングルCDセールスに強くない、もしくはシングルCD自体リリースしていない曲がより上位に登場する見込みです。であれば、それら楽曲はチャートを構成する指標のどの部分が強かったかを探ることが重要でしょう。CHART insightを探ると長所、そして長所以上に強くない点がみえてきます。機会があれば、また年間チャートが発表になった際には是非チェックしてみてください。