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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

Kanaria「KING」、Ado「うっせぇわ」…ボーカロイド関連作品の強さを支える指標とは

前週初めてビルボードジャパンソングスチャート100位以内に登場し、今週さらなる上昇を遂げた2曲。今後のブレイクの可能性を秘めたこれらの曲には、ある指標の急伸という共通点があります。

・Kanaria「KING」(11月30日付ビルボードジャパンソングスチャート85→42位)

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・Ado「うっせぇわ」(11月30日付ビルボードジャパンソングスチャート 74→58位)

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この2曲は共にボカロPによる作品。Ado「うっせぇわ」はsyudouさんがソングライトを手掛け、一方「KING」についてはKanariaさん自身がボカロPとして活動しています。

上記チャート推移(CHART insight)においては2曲ともに動画再生指標(赤の折れ線)が高く(「KING」4位、「うっせぇわ」7位)、他の指標も緩やかに上昇しはじめているのですが、特徴的なのは深い緑で表示されるカラオケ指標がここにきて上昇していること。「KING」は65→49位と推移、また「うっせぇわ」は(上記チャート推移からは分かりにくいものの)今週初めて300位以内に入り加点対象となっています。

 

 

 

今年のブレイク作品にはTuneCore Japan等の配信代行サービスを用いた曲が多いのですが、大ヒットに至るにはラジオエアプレイとカラオケ指標の拡充が大事ではないかということを、瑛人「香水」の首位獲得前のタイミングで指摘したことがあります。

一方でボーカロイド関連作品においてはこのカラオケが強いのが特徴と言えるかもしれません。バルーン「シャルル」がカラオケ指標を味方につけて長期エントリーを果たしているのは最も分かりやすい例でしょう。

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このボーカロイド文化の歴史を辿る上で、非常に参考になる記事がReal Soundで公開されたばかり。自分も以前担当していたラジオ番組でボーカロイドファンの大学生と話したことがあるのですが、彼ら世代にとっては小学生の頃からボーカロイド文化が当たり前のようにあったため、十年強で成熟し浸透したこの文化に幼少期から触れているならば間違いなく、新しい作品に触れることに積極的になったり名曲をそらで歌えるのだと納得するのです。

この文化がネット発ゆえ、我先に解禁しないと信頼失墜しかないとして通信カラオケ業者が積極的な解禁を行うのではないでしょうか。このことが、配信代行サービスを用いてヒットに至る曲が強くないカラオケ指標におけるボーカロイド作品の優位性と言えそうです。

 

ひとつだけ気掛かりなのは、カラオケ指標が再度集計取り止めとなる可能性。バルーン「シャルル」で明らかなように、カラオケ指標が今年一時期”断絶”という状況がありました。これはコロナ禍における緊急事態宣言発令を受けての措置でした。その時以上に新型コロナウィルスが流行する現在にあっては、いつ宣言が発令されるかが見えてきません。仮に宣言発令を受けてカラオケ指標が再度取り止めに至った場合、ボーカロイド楽曲はこの指標以外のポイントで補填しなければならず、ならばこの文化をボーカロイド好きな方以外にどう広めていくかが課題になるものと考えます。