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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ビルボードジャパン新年度初回チャート、チャートポリシー変更から見えてくるものとは

毎週木曜は、前日発表されたビルボードジャパン各種チャートの注目点を紹介します。

11月23~29日を集計期間とする12月7日付ビルボードジャパンソングスチャート(Hot 100)、新年度1回目を制したのはLiSA「炎」でした。通算6週目となる首位獲得です。

チャート推移等は下記に。

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今週もTwitter以外7指標でトップ10入りを果たし、ポイント推移も大きく落とすことはなかった「炎」。そのTwitter指標は、今週アルバムチャートで『The STAR』が初登場を果たしたJO1の曲が大量にエントリーを果たし、同指標で1~3位独占かつトップ10の半数を占めたゆえに「炎」が押し出された形。しかしJO1においては総合ソングスチャート100位以内のランクインが「Shine A Light」(58位)のみであり、またアルバムはBTS『Be』に敗れていることから、どちらのチャートについても各指標まんべんなくポイントを獲得することが課題と言えます。アルバムチャートのCHART insightは下記に。

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LiSA「炎」はストリーミング再生回数で登場7週目にして1億回再生を突破しました。これはBTS「Dynamite」の11週を大きく上回るものです。

ここ数週になってようやくLiSAさんサイドがビルボードジャパンの成績を積極的に取り上げるようになって安堵するとともに、やはりこのスピードには驚かされます。そしてこのストリーミング再生回数においては、今週新記録が生まれています。

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ストリーミングを制する曲が大ヒットにもロングヒットにもつながることは自明。サブスク解禁、ミュージックビデオのフルバージョンでの解禁が如何に重要かはこの点から明らかです。

このストリーミングについてはBTSが強さを発揮しています。今週はアルバム『Be』解禁後初の1週間フル加算(先行曲の「Dynamite」を除く)であったことから、「Life Goes On」が総合ソングスチャートで22→10位に上昇。そして「Dynamite」は4→3位となり、ポイント前週比は24.7%もの大幅アップとなりました。

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上記チャート推移(CHART insight)で解るように、ストリーミング(青で表示)および動画再生(赤)の接触指標群がポイントを牽引していることが解ります。

「Life Goes On」は、今週発表された12月5日付米ビルボードソングスチャートで初登場首位を獲得していますが、そちらでは所有指標であるダウンロード(フィジカルセールスを含む)が強すぎる一方で接触指標のひとつであるラジオエアプレイが極端に弱いことから、日本を含む世界各国とアメリカとでBTSがどの指標に強いかは歴然。これは一昨日のブログエントリーにて紹介したグローバルチャートの動向(米との比較)からも解ります。

次週の日米およびグローバルチャートにおいて、BTS「Life Goes On」のランクダウン幅に大きな差が生じるものと思われます。米チャートでワースト記録が樹立される可能性もあり、気掛かりです。

 

(なお、苦言を呈する形となりますが、ビルボードジャパンにおける米ビルボードソングスチャート紹介記事において、ラジオエアプレイの数値を紹介しない翻訳に驚きました。無論元の記事(→こちら)をすべて翻訳する必要はありませんが、あたかもよくない記録を隠したと捉えられかねないこと、各指標をバランスよく獲得してこそロングヒットに至れるという米ビルボードのチャートポリシーすらみえにくい可能性を孕んだ今回の翻訳には賛同しかねます。ビルボードジャパンの翻訳記事は下記ツイートからご確認ください。

今年米ビルボードソングスチャートを初登場で制した曲のチャート構成3指標の動向をみると、「Life Goes On」が如何に歪かが解ります。

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素行不良と問題発言の連続でラジオから敬遠されたシックスナインによる「Trollz」よりも、「Life Goes On」のラジオエアプレイが低い状況は非常に気掛かりです。

BTSは今回のチャート制覇で、所有指標の高さから今後は新曲を出せば首位獲得できる状況になったと考えられます。ならば、BTSのファンはさらなる高みを目指すべく、今後は如何にロングヒットに至らせるかに考え方をシフトさせるべきだと考えますし、そのために米ラジオ局へ積極的に働きかける(意図的に外国語曲を流さないということが判明すれば、局へやわらかくも厳しく問いかける)ことが必要でしょう。)

 

 

さて、今週から新年度チャートとなり、ビルボードジャパンではこのタイミングで5つの新しいチャートを新設しました。簡単な解説も交えてツイートしたものを下記に。

新設された5つのチャートはこちらから確認できます。この中でソングスチャートに影響を及ぼすのがTop User Generated Songsチャートであり、今週から動画再生およびストリーミングの接触指標群からUGC(ユーザー生成コンテンツ。歌ってみたや踊ってみた等の動画に代表される)が除外され、総合ソングスチャートと分離させるというチャートポリシー変更が行われました。その結果、たとえばTop User Generated Songsチャートで3位に入ったYOASOBI「夜に駆ける」(総合8位)はソングスチャートにおけるポイント前週比が17.3%ダウン。ストリーミング3→6位かつ動画再生2→9位となっており、UGCによるポイントが多かったことが見て取れます。またTop User Generated Songsチャートでは20位未満ながら、瑛人「香水」(総合16位)もポイント推移が前週比15.3%のダウン。これらの曲は以前ブログにて”愛される動画”と紹介したものであり、TikTokYouTube等で人気に火がついた作品がより影響を受けたと捉えてよいでしょう。

UGCが前週までのソングスチャートにはっきり影響を与えていたと言えるのが、Kanaria「KING」。Top User Generated Songsチャートを制した同曲はソングスチャートにおいて動画再生が4→70位と急落、総合でも42位から100位圏外(300位以内)にダウンしてしまいました。

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さらに影響が大きかったのがEve「廻廻奇譚」(総合15位)。Top User Generated Songsチャートで9位に入った同曲は総合では1ランクダウンするもののポイント前週比は1.1%のプラスと好調。しかし動画再生は31位から300位圏外となり、同指標が加点対象となっていません。

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この2曲については次なるブレイクの可能性を秘めた曲として先月このブログにて取り上げていました。

特にEve「廻廻奇譚」については、ミュージックビデオ公開前から動画再生指標が伸びていたことをUGCに因るものとお伝えしていました。今週からUGCの獲得ポイントが動画再生指標から外れた形ですが、他方今週初めて公開から1週間丸々加算対象となったミュージックビデオの再生回数がおそらくは指標に加点されていないことになります。

チャート分析に長けた あささんのツイートを勝手ながら引用しましたが(問題があれば削除させていただきます)、この見解がまさにそうだよなと思うのです。公式動画のISRC付番の可否は今後ますます重要になり、取りこぼしは大きな損失となります。「廻廻奇譚」がハイペースで再生回数を記録しているゆえ尚の事です。

ISRCは動画公開後でも付番可能となるわけでその事後処理も含めて、歌手側そしてそれ以上にレコード会社側および芸能事務所側のマネジメント能力が尚の事問われてくると言っても過言ではないでしょう。