イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

(追記あり) 12月21日付ビルボードジャパンソングスチャート制覇、櫻坂46の初陣をどうみるか

毎週木曜は、前日発表されたビルボードジャパン各種チャートの注目点を紹介します。

12月7~13日を集計期間とする12月21日付ビルボードジャパンソングスチャート(Hot 100)、櫻坂46「Nobody's fault」がシングルCD初加算効果で首位を獲得しました。

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アイドルの曲はシングルCDセールス初加算週に突出したポイントを獲得するのが常ですが、その中にあって坂道グループ(とりわけ乃木坂46および欅坂46)はデジタル指標群にも長け、年間チャート上位進出の常連となっていました。とはいえ今回の「Nobody's fault」におけるチャート構成指標をみるに、年間チャートの上位進出が難しいと捉える自分がいます。

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上記は2017年度以降のビルボードジャパンソングスチャートにおける欅坂46および櫻坂46のシングルCD表題曲の動向(CD関連指標初加算週とその前後の3週分を表示)。2017年度以降としたのは、一定枚数を上回るCDセールス(週間30万枚と言われています)を超えた場合に係数処理が行われたのが同年度以降であり、係数適用によりチャートがより社会的ヒットの鑑となったと考えるためです。

表をみると「Nobody's fault」におけるCDセールスの落ち込みが目立ちますが、これはCD購入者向けイベントが設けられているとしても直接会えなくなったというコロナ禍の事情が大きいでしょう。しかし、個人的により重要だと感じるのはCD関連指標加算前週のポイントの弱さ、そしてCD加算初週の接触指標群の弱さにあります。

基本的にダウンロードやストリーミングをCDセールスと同週に解禁する傾向のあるグループですが、しかし動画再生は基本的に別でした。「Nobody's fault」においては以前からミュージックビデオが公開され、動画再生指標は4週前から加算されています。しかしCD初加算週においても同指標で100位未満というのは、これまでに見られない傾向です。またこの指標が前週も弱いため、CD加算前週における総合ソングスチャート100位未満という順位にも表れています。動画再生指標がシングルCD加算初週でも上昇しない状況は、以前ジャニーズ事務所所属歌手においても取り上げた”ライト層への拡がりの大きくなさ”を示すものではないかと考えます。

さらに、ストリーミングの弱さも気になります。サブスク等の再生回数に基づくストリーミング指標がCD加算週に100位に達しなかったという状況もまた、これまで見られなかったことです。実は今週の総合ソングスチャートの記事において、「Nobody's fault」の再生回数が1002720再生であることが明らかになっています。チャート振り返り記事ではストリーミング指標50位未満の曲は再生回数が記載されないため、記載は異例と言えます。

(※追記(12月24日):冒頭の記事のリンク先を辿ると、12月17日に訂正されたとアナウンスされ、そこには『※記事初出し時に、櫻坂46「Nobody's fault」のストリーミング数について誤った数字を記載しておりました。お詫びして訂正いたします。』とあります。100万再生という数値は誤りではなく、本来50位未満の曲は未記載であるところを誤って掲載したのではというのが私見。ただし、ビルボードジャパンのTwitterアカウント(→こちら)にて訂正した旨を記載しておらず、その点に対し疑問を抱いたことを記させていただきます。)

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100万という再生回数は、それこそ欅坂46時代の最後のシングルCD表題曲である「黒い羊」が首位に登場した2019年3月11日付における10位のストリーミング再生回数(1059424再生)に近い数値。当該週における「黒い羊」のストリーミング再生回数は1540613再生であり、櫻坂46「Nobody's fault」は前作のおよそ3分の2となっています。仮に「Nobody's fault」が昨年の同時期にリリースされていたならばストリーミング指標でも上位進出を果たせたでしょうが、上記グラフをみればストリーミング全体の拡充は明らかであり、以前と同等のレベルをキープしていたとしてもストリーミング指標で存在感を示せなくなっているのです。

 

これらから、CD購入者向けのイベントで実際に会えなくなったこと等がCDセールスに影響を及ぼしていること、そして動画再生やストリーミングからはライト層が減っているだろうことがみえてきました。

コロナ禍においてアイドルをはじめとする歌手のシングルCDセールスはジャニーズ事務所所属歌手を除き苦戦を強いられていますが、坂道グループは元来シングルCDをリリースしていませんでした。今回、先陣を切る形で櫻坂46が、それも改名後の初陣となる作品をリリースしましたが、CDセールスのダウン以上に接触指標群の弱さが露呈されてしまったように思うのです。この接触指標群はCD関連指標加算2週目におけるポイント前週比に大きく影響するのですが、欅坂46はこれまでアイドルでは極めて高い数値(常時20%以上)を誇っていました。このCD関連指標加算2週目におけるポイント前週比が今回2割を切ったならば、「Nobody's fault」は年間チャートで存在感を示しにくいものと考えます。

 

 

なお、前週首位を獲得したNiziU「Step and a step」はCD関連指標加算2週目となる今週、ポイント前週比が32.0%となりました。これはNiziUと同じ事務所に所属するTWICEが日本オリジナル曲をCDリリースした際の動向に近く、またアイドルの中では高い数値と言えます。無論CD関連指標加算3週目以降の動向を見て判断しなければなりませんが、「Step and a step」はこのまま高いレベルを維持していけるかもしれません。