イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

Hey! Say! JUMP「I am」急落はストリーミングの興隆が一因? 行うべき対策は何か

昨日紹介した最新3月16日付ビルボードジャパンソングスチャートでも触れましたが、前週首位を獲得したHey! Say! JUMP「I am」は54位に急落してしまいました。今回、このことが強く気になっています。

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2018年度以降、ジャニーズ事務所所属歌手の動向を追いかけているのですが、シングルCDセールス指標加算2週目に50位未満となる曲はほとんどありません。Hey! Say! JUMPにおいては下記の通り。

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曲名の下の日付はシングルCDリリース日であり、日付が2つ記載されているものは右側がレンタル日を示します(日付がひとつのものはリリースとレンタルが同日)。こうして一覧化すると、順位的にもここまでの急落はやはり珍しいことが判ります。50位未満は総合ポイント未掲載のため、今週は1732ポイント未満と推測される「I am」はシングルCDセールス加算2週目におけるポイント前週比が8.4%未満と推測。この数値もジャニーズ事務所所属歌手の平均(10~20%)を下回るものです。前作「ファンファーレ」と比べてポイントを大きく落としていること、「I am」が「Muah Muah」とのダブルAサイドシングルであり票割れを起こしたことも影響しているかもしれませんが、それにしてもこの急落は気掛かりです。

 

さて今回、Hey! Say! JUMP「I am」の動向を調べるうちに、50位における総合ポイントの高さがいつもに比べて際立って高いと感じたのですが、果たして今回が特別なのかそれとも50位の水準が上がっているのか気になり、2018年度以降のチャートにおける50位のポイント推移をグラフ化してみました。

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この2年ちょっとの間に推移は緩やかに上昇。2018年度は平均1013.1ポイント、2019年度は1208.9ポイント、そして2020年度は現在までの平均が1376.4ポイントとなっており、年間単位でみるとソングスチャート50位の水準は上がっていることが解ります。

この水準を押し上げる要因を推測するに、サブスク再生回数を基にしたストリーミング指標が最も大きいのではと思い、こちらについても調べてみました。ビルボードジャパンの記事においては2019年度以降、ストリーミングソングスチャートについて10位までの再生回数が記載されていることから、1位および10位の数値をこちらもグラフ化しています。

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わずか1年ちょっとの間に、最新のストリーミングソングスチャート10位の再生回数が、2019年度最初のストリーミングソングスチャートの1位のそれを上回っています。ビルボードジャパンソングスチャートでは昨年11月18日付よりSpotifyを導入し、さらに無料と有料とで異なる係数を乗じる方法を採用していますが(Spotify導入等については以前紹介しています→こちら)、ストリーミング指標はSpotifyを導入する以前から盛り上がってきたと捉えることが出来ます。そう考えると、ストリーミング指標の基であるサブスクの興隆が総合ポイントの水準を押し上げる要因のひとつと断定して好いでしょう。

(ちなみにソングスチャートを構成する8指標のうち、他に水準を押し上げ得ると考えられるのは動画再生指標でしょう。データ通信の大容量化等によりYouTube等の活用者が増えてきたことも考えられます。しかし、こちらについては記事にて数値がほぼ未記載であるため、推移を追いかけることが出来ません。)

 

ストリーミング指標の基であるサブスクの興隆は、下記報道も踏まえれば今後も続くことが見込まれます。

これを踏まえれば、ソングスチャートのポイントが今後さらに底上げされることも間違いないでしょう。Hey! Say! JUMP「I am」においては様々な要因により急落につながったものと思われますが、他の曲の平均値上昇により埋もれてしまったことも急落の一因と言えます。これを解消し急落させないためは、ロングヒットにつなげるためにはどうするかは、上記動向表や以前書いたロングヒットの条件を見れば自明と言えます。

レコード会社、そして何より所属事務所であるジャニーズ事務所には対策を考え、実行してほしいと切に願います。

Official髭男dism「I LOVE...」は『恋つづ』効果で年間1位も射程圏内?…3月16日付ビルボードジャパンソングスチャートをチェック

毎週木曜は、前日発表されたビルボードジャパン各種チャートの注目点をソングスチャート中心に紹介します。

 

3月2~3月8日を集計期間とする3月16日付ビルボードジャパンソングスチャート。前週首位のHey! Say! JUMP「I am」は54位へ急落、新たな1位はJO1のデビュー曲「無限大」が獲得しました。

オーディション番組『PRODUCE 101 JAPAN』出身のグループ、JO1が制覇しました。シングルCDセールスが35万近い売上を記録し同指標1位になった一方、ルックアップはセールスでJO1の5分の1にとどまるMr.Children「Birthday」(総合3位)に敗れています(とはいえ「Birthday」のCDセールスは決して悪い数字ではありません)。JO1がルックアップで敗れたことはレンタル数およびユニークユーザー数の多くなさが予想されるため、今後「無限大」がロングヒットとなるためには如何にライト層を獲得するかが鍵となります。またMr.Children「Birthday」においてはダウンロード、ストリーミングおよび動画再生のデジタル指標群がすべて未加算。CD販売に特化した施策なのかもしれませんが、この「Birthday」から6位のKing Gnu「白日」まで8000ポイント台の接戦であったため、もしかしたら今週トップ5入り出来なかった可能性もあったわけです。タイアップ映画の延期も影響しているかもしれませんが、デジタル施策を見直す必要があるとも考えます。

 

さて今週、やはりOfficial髭男dism「I LOVE...」を取り上げないわけにはいきません。

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2週連続で首位を獲得した後、シングルCDセールスに長けた曲が首位に躍り出る影響で3週連続2位にとどまっていますが、そのポイントはシングルCDセールス加算以降4週連続で1万ポイントを大きく上回っています。それのみならず。

最高ポイントを獲得するタイミングは、シングルCDがリリースされる場合はその加算初週であることが多いのですが、Official髭男dismはその法則をいい意味で裏切ることに成功しています。

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ビルボードジャパンが発信する週間チャートのニュースに掲載されたシングルCDの売上枚数、ダウンロード数、サブスクを基とするストリーミングの再生回数および動画再生回数、そしてそれらの前週比を、総合および各指標の順位に加えたものが上記。ストリーミングおよび動画再生は前週比が常に100%超えを果たし、今週はシングルCDセールスおよびダウンロードも上昇に転じています。

「I LOVE...」の強さの理由は、同曲が主題歌に起用されたドラマ『恋はつづくよどこまでも』(TBS 火曜22時)の人気が大きいということは前週紹介しました。

最新3月16日付ソングスチャートの集計期間に放送された第8話(3月3日放送)の無料見逃し配信はTBS史上最高を更新。またリアルタイム視聴率も番組最高となる12.1%を獲得しています(視聴率はビデオリサーチ調べ・関東地区の結果。以下同じ)。

リアルタイム視聴率とタイムシフト視聴率(1週間以内の視聴)を足し重複分を差し引いた総合視聴率では第6話と第7話で20%を突破したことから、第8話の総合視聴率20%超えは確実といえます。また一昨日放送された第9話のリアルタイム視聴率は14.7%となり最高記録を更新しています。

このペースでいけば、ドラマ人気に比例して「I LOVE...」人気が加速するのは確実。少なくとも、第9話効果が表れる次週および最終回放送週を集計期間とする再来週のソングスチャートでは15000を超える可能性は低くないと思われます。ラジオエアプレイが下がり、新型コロナウイルスによる自粛要請でカラオケ需要が減ることは予想されますが、ドラマ人気がサブスクやYouTube等の盛り上がりに波及すればそれらマイナスを補填するのに十分な力となるでしょう。

そして、これは9ヶ月先の話ではありますが、今年度の年間ソングスチャートにおいては「I LOVE...」の上位登場は間違いないでしょう。昨年の年間ソングスチャートにおいては首位の米津玄師「Lemon」がおよそ326000、2位のあいみょんマリーゴールド」が290000、3位のOfficial髭男dism「Pretender」が240000ポイントを獲得していると推測されますが、「I LOVE...」は現段階で86000ポイント強。ドラマが放送される残り2週に15000ポイントずつ獲得すると仮定すれば再来週までに116000ポイントに達し、その上で昨年度の「Lemon」の水準に達するにはその後平均して6000ポイントを獲ればよい計算となります。ストリーミングや動画再生が強い曲はどんなに下がっても前週比90%を割り込むことが稀であることを踏まえれば、昨年と今年で若干チャートポリシーが変更したとは言えども、「I LOVE...」が「Lemon」並みのポイントを稼ぐことは十分有り得ると思うのです。

 

ただ、Official髭男dismの場合は「Pretender」同様、この春に映画『コンフィデンスマンJP プリンセス編』に「Laughter」が主題歌として起用されることが決まっています。

となると、「Laughter」の登場により「I LOVE...」が押し出されるのでは…という懸念は杞憂だと言えそうです。今週のソングスチャートにおいてはOfficial髭男dismの他の曲の総合ポイントも上昇するものが多く、「Pretender」(4位 前週比103.3%)、「宿命」(9位 同104.6%)、「イエスタデイ」(10位 同101.9%)、「115万キロのフィルム」(13位 同108.9%)というように、トップ20入りの曲はすべてアップしています。およそ2年前にリリースされたアルバム『エスカパレード』のオープニングを飾る「115万キロのフィルム」は今週最高位を更新したこともあり、ドラマ効果はヒゲダン全体の勢いにつながっているのです。

BTS「On」が最新の米ソングスチャートで64ランクの急落…この動向をどう捉えるか

昨日、最新3月14日付米ビルボードソングスチャートの速報を発表したのですが、ブログエントリー更新前後にBTS「On」の動向が入ってきました。

最新のソングスチャート(Hot 100)はこちら。この急降下を知った当初は上記のようにリアクションしたのですが、後に色々考え直した次第。いただいたリアクションから再度考えを巡らせています。

(いただいたリアクションのツイートを引用させていただきました。問題があれば削除いたします。)

米アルバムチャートで上位に初登場を果たした作品の収録曲がソングスチャートにも大挙登場するのは、アルバム収録曲のストリーミング総再生回数がアルバムのユニット数に換算され、同時に曲単位の再生回数がソングスチャートに反映されるるため。ゆえに今週のアルバムチャートでワンツーフィニッシュを果たしたリル・ベイビー『My Turn』(197000ユニットのうちストリーミングのアルバム換算分は184000)、およびバッド・バニー『YHLQMDLG』(179000ユニットのうちストリーミングのアルバム換算分は142000)の収録曲のうち、BTS「On」の上位に前者は9曲、後者は4曲初登場(さらに1曲が再登場)を果たしています。加えて昨日触れましたがレディー・ガガ「Stupid Love」が5位に初登場するなど、BTS「On」の68位より上位に18曲も初登場した(再登場の1曲を含む)ことで、「On」が一気に押し出されたと言えます。

 

さて、BTSのアルバム初登場週以降におけるソングスチャートのアクションについては先週紹介しました。

現在は米ビルボードで大半のチャートが有料会員でなければ見られない措置を採っているため(この措置については以前紹介しました→こちら)、「On」の各指標の動向は追いかけられない(また有料会員のみが知り得る情報は紹介することが出来ない)のですが、アルバムチャート初登場週と翌週におけるリード曲の総合ソングスチャートにおける順位変動、および翌週における初登場および再登場曲の数をまとめてみると。

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アルバムチャート登場2週目のソングスチャートにおいて、BTSより上位に初登場や再登場を果たした曲が最も多いのが今回の「On」。次いでニッキー・ミナージュをフィーチャーした「Idol」となりますが、この「Idol」においては当該週にエミネムのアルバム『Kamikaze』が初登場で首位をマークし、収録曲が大挙エントリーを果たしています。

ゆえにこの2曲の大幅ダウンにおいては、【ストリーミングが強い作品がアルバムチャートで初登場を果たし、ソングスチャートにも大挙エントリーしたために押し出された】という説が成り立つと言えます。

 

とはいえ、これはあくまでたらればの話であり、毎週様々な作品が登場するのは当然のこと。仮にこれら初登場等作品がなかったとしても、BTSの順位変動は【アルバムチャート初登場週のトップ10前後登場→翌週トップ40入りを保てたならばよし】であることは確かであり、初登場時に高かったダウンロードの急落をストリーミングやラジオエアプレイがカバー出来ないのはやはり弱点であると断言していいでしょう。先週も書きましたが、ストリーミングの長期安定とラジオエアプレイの上昇は、世界的な流行に影響を及ぼすアメリカのチャートでヒットさせるためには、やはり緊急の課題なのです。

ロディ・リッチ9連覇、レディー・ガガがトップ10入り…3月14日付米ビルボードソングスチャートをチェック

ビルボードのソングスチャートをチェック。現地時間の3月9日月曜に発表された、3月14日付最新ソングスチャート。ロディ・リッチ「The Box」が9連覇を達成、またレディー・ガガ「Stupid Love」が5位に初登場を果たしました。

ロディ・リッチ「The Box」は上記ミュージックビデオが今週のストリーミングに初加算。しかしながら同指標の上昇は前週比2%アップにとどまっており、さほど効果が大きくなかったと言えるかもしれませんが、それでも4910万を獲得しストリーミング指標10週目の首位を獲得。2桁首位はリル・ナズ・X feat. ビリー・レイ・サイラス「Old Town Road」(2019)の20週以来となる快挙達成です。ダウンロードは前週比10%アップの11000(同指標7位)、ラジオエアプレイは同1%未満アップの6340万(同8位)と全指標が上昇しています。

この「The Box」に阻まれ続け、初登場以降今週まで2位をキープしているフューチャー feat. ドレイク「Life Is Good」は今週が8週目。ラジオエアプレイは前週比13%アップの4970万を獲得し同指標15位となっていますが、ストリーミングは2位をキープしながらも同13%ダウンとなっています。

8週以上2位の座にとどまり終ぞ首位を獲得出来なかった曲はこれまで9曲あり、「Life Is Good」が首位を獲得出来ないならば10曲目となってしまいます。2位の最長記録はミッシー・エリオット「Work It」(2002-2003)とフォリナー「Waiting For A Girl Like You」(1981-1982)の10週。このうち「Work It」は10週間すべてエミネム「Lose Myself」に首位の座を阻まれており、1位と2位が10週以上固定していたのはこの「Lose Myself」と「Work It」のみ。「Life Is Good」があと2週2位をキープすればこの記録に並ぶかもしれません。

しかしながら「Life Is Good」を驚かす存在が登場。それが新たにトップ3入りを果たしたデュア・リパ「Don't Start Now」であり、デュア・リパ自身初のトップ3入りを果たしています。とりわけラジオエアプレイが強く、前週比5%アップの9530万を獲得し同指標2位をキープ。同指標はポスト・マローン「Circles」が今週11週目の首位をキープしていますが(前週とほぼ変わらず1億110万を獲得)、総合では「Circles」が4位に後退しました。

今週新たなトップ10入りを果たしたのは、レディー・ガガ「Stupid Love」。

レディー・ガガにとって16曲目となるトップ10入り、且つ初登場でのトップ10入りは7曲目。2月28日金曜にリリース、同時にミュージックビデオが公開されたことがトップ10入りに大きく貢献しています。ダウンロードは53000を獲得し同指標トップ、ストリーミングは1970万となり同指標9位、そしてラジオエアプレイは2370万を獲得し同指標40位。ラジオエアプレイが初登場の段階で50位以内に入っているのはレディー・ガガの強さの秘訣と言えます。今回のトップ10入りで、レディー・ガガは2008年にコルビー・オドニスとの「Just Dance」が初のトップ10入りを果たして以来、3つのディケイドでトップ10入りを果たした5組目の歌手となりました。他の4組はマライア・キャリー、ドレイク、エミネムおよびマルーン5。なおマライア・キャリーは1990年代もトップ10入りを果たしています。

 

最新のトップ10はこちら。

[今週 (前週) 歌手名・曲名]

1位 (1位) ロディ・リッチ「The Box」

2位 (2位) フューチャー feat. ドレイク「Life Is Good」

3位 (5位) デュア・リパ「Don't Start Now」

4位 (3位) ポスト・マローン「Circles」

5位 (初登場) レディー・ガガ「Stupid Love」

6位 (6位) アリゾナ・ザーヴァス「Roxanne」

7位 (8位) ザ・ウィークエンド「Blinding Lights」

8位 (7位) トーンズ・アンド・アイ「Dance Monkey」

9位 (9位) マルーン5「Memories」

10位 (11位) ジャスティン・ビーバー feat. クエイヴォ「Intentions」

初登場でのトップ10入りは素晴らしいことですが、次週ダウンロードの急落をラジオエアプレイやストリーミングで補えない限りトップ10陥落の可能性が高いといえます。ラジオエアプレイに長けたレディー・ガガ「Stupid Love」がどこまで踏ん張るか、注目しましょう。

Sexy ZoneとKing & Princeの”W主題歌”…ジャニーズ事務所の2020年における新概念提唱型のひとつ?

【W主題歌】という文言が非常に気になるのです。

音楽番組『Premium Music』は3月25日に日本テレビで放送。同局の4月クールのドラマ『未満警察 ミッドナイトランナー』の主演を務める中島健人さん、平野紫耀さんが所属するSexy ZoneおよびKing & Princeが共に主題歌を担当するということですが、両名のコメントに登場する【W主題歌】という表現が妙に引っかかりました。

 

いや実は、この【W主題歌】を調べてみると、ここ最近になって見かけるようにはなっています。たとえば1つの作品で2曲が主題歌という例としては、『映画ドラえもん のび太の新恐竜』(2020)におけるMr.Childrenが記憶に新しいところ。

映画では『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』(2015)の前後編でSEKAI NO OWARIがそれぞれ異なる主題歌を提供することから【W主題歌】と呼ぶパターンも。

このような例もあり、一組の歌手が(前後編と分ける等はあれど)同じ作品に2曲を提供するというのが【W主題歌】の定義だと捉えていた方は少なくないでしょう。他にも『遺留捜査』(テレビ朝日)の第5シーズン(2018)では、過去に用いられた小田和正さんによる「やさしい風が吹いたら」「小さな風景」が物語の内容によって使い分けられたという例もありますが、この使い方は異例。

 

今回、【W主題歌】(ダブル主題歌を含む)を音楽ナタリーで検索したところ、異なる歌手がひとつの作品の主題歌を手掛けたという例はほぼありません。

挙げるとすれば、映画『音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』(2018)では阿部サダヲさんと吉岡里帆さんがそれぞれ演じる役柄名義で主題歌を担当していますが、共に1枚のコンピレーションアルバムに収録。

スマートフォン向けゲーム『ザクセスヘブン』主題歌を夢みるアドレセンスとi☆Risがそれぞれ担当していますが、i☆Risはファーストアルバム収録曲、夢みるアドレセンスはメジャーファーストシングルの初回生産限定盤Cのカップリング曲に収録され、シングル表題曲にはなっていません。

映画『復讐したい』(2016)ではROTTENGRAFFTYおよびlynch.の2組が主題歌を担当していますが、それぞれ(ミニ)アルバムに収録されています。

これらを踏まえれば、【ひとつの作品の主題歌を異なる2組が担当】し、仮に【両者の主題歌が共にシングルCD表題曲】となるならば、そのような形での【W主題歌】は初ということになるのではないでしょうか。

 

Sexy ZoneとKing & Princeがそれぞれ用意した主題歌が、ドラマ『未満警察 ミッドナイトランナー』でどのように使われるのかは解りかねますが、少なくとも先に挙げた音楽特番での両者のコメントに【W主題歌】という言葉が見られることから、両者が所属するジャニーズ事務所がこの概念を提唱していくことはほぼ間違いないと捉えています。

ジャニーズ事務所による新概念で思い出すのは、SixTONESSnow Manが同時デビューした際、両者のシングルCDに相手のシングルCD表題曲を収録させて合算を可能にさせた【2組で合算セールス】方式。オリコンが合算方式を採用し、「Imitation Rain」と「D.D.」はミリオンセールスを達成したと紹介しています。

ただ、今回の【W主題歌】についてはSexy Zone、King & Princeでそれぞれリリースする模様です(オリコンの記事はこちら)。


 

【2組で合算セールス】という手法も、実は1992年に松任谷由実カールスモーキー石井「愛のWAVE」で採られている、とWASTE OF POPS 80s-90sさんで指摘されています。

(勝手ながら紹介させていただきました。問題があれば削除いたします。)

【W主題歌】も【2組で合算セールス】も前例があることは間違いありません。とはいえ【2組で合算セールス】と【W主題歌】を同じ2020年に行うこと、前者は数多のプロモーションを行い、後者はドラマの主演2名が音楽特番の司会を担当という徹底っぷりを踏まえるに、これら概念をジャニーズ事務所はこれからの当たり前にしていくのではないかと思うのです。

ラジオ春改編の3月改編という異変、そしてぐっさん降板とその報道への違和感を記す

ラジオ業界の改編期は4月と10月が定番ですが、最近は1月および7月からはじまる番組も出てきており、改編期はテレビに近い形になったと言えるかもしれません。そんな中、新たな改編期が登場しました。それが今月。

J-WAVEでは昨日から『SHIBUYA DESIGN』(土曜15時)がスタート。先月まではこの枠で、横山エリカさんナビゲートの『FRUIT MARKET』がOAされていました。

今後3月改編が増えるかは解りかねますが、おそらくこの改編は首都圏放送局が年6回、偶数月に聴取率調査週間を設けているためだと考えます(聴取率調査についてはこちらを参照のこと)。次回調査が来月であることから、それまでに番組を慣らす、軌道に乗せるという意味合いがあるのかもしれません。

 

さて同じく3月から、改編とは呼びにくいものの大きく舵を切った番組が。

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ニッポン放送で昨年春からはじまった『DAYS』(月-木曜13時)はパーソナリティが日替わりとなるのですが、番組開始から月曜を担当していたぐっさんこと山口智充さんが2月上旬で離れることに。

(※放送から1週間以上経過しているため、radikoタイムフリーは利用できません。)

2月後半の月曜は2週続けて番組の放送がなく、3月2日月曜の放送では木曜パーソナリティの安東弘樹さんが担当していました。その日、番組冒頭の数分間を聞いてみたのですが、安東さんは月曜も兼任する等のアナウンスはなく、自己紹介していたもののぐっさんへの言及もありませんでした。ニッポン放送の番組表を見る限り、明日3月9日はゲッターズ飯田さんがメインパーソナリティを担当する模様ですが、やはりぐっさんの降板は不可解と思う自分がいます。

3月改編が、先述したように4月の聴取率調査への対策であるならば、早期に終わらせた前番組に対して相当に失礼だと思うのですが、それでもまだ理解は出来ます。しかし、『DAYS』の場合はパーソナリティが完全交代したわけではなく月曜はイレギュラーの状態。ならば少なくとも3月まで番組を担当させるべきではなかったかと思うのです。

しかも2月後半の月曜は2週続けて特番。2月24日は祝日のため特番編成が組まれていますがこれはJ-WAVE等他局も行っているためまだ解ります。個人的に問題と思うのが平日にあたる2月17日で、この日が同月の聴取率調査初日にあたることからでしょう、”ニッポン放送65周年記念”としてさだまさしさんの特番が用意されているのです。

(※放送から1週間以上経過しているため、radikoタイムフリーは利用できません。)

アシスタントは同郷であれど『DAYS』と同じ東島アナウンサーであるならば、なぜ番組を差し替えたのだと『DAYS』リスナーに思われておかしくないのではないでしょうか。スペシャルウイークになると多用される、レギュラー番組を潰して特番を組ませるニッポン放送の施策は以前から問題視しているのですが(下記リンク先参照)、ぐっさんの降板を早めさせることすら厭わないという姿勢は、番組やファンを何だと思っているのかという局への不信が芽生えるきっかけにつながるものと考えます。

 

さて、ぐっさんはこの春、テレビ番組も一本終了とアナウンスされています。そこでなのか、まるでこのタイミングを図っていたかのような記事が登場しているのですが(→こちら)、匿名の芸能デスクが述べる『『リンカーン』降板が潮目だった』という指摘については降板以降も活躍していたことを踏まえれば当てはまらないと思います。また某テレビ制作関係者が『MC席と雛壇の芸人たちが内輪ネタでイジり合う、素人的な笑いが今のバラエティの潮流。しかし山口の持ち味は演技力を活かしたコントや達者なものまねといった玄人芸。それを発揮できるコント番組が少ないのが彼の不幸』と述べていますが、ならば玄人芸よりも内輪ネタでイジり合う番組が好まれる日本のバラエティ界こそ問題であり不幸だと思うのです。匿名ならば何でも書いていいとでも言うべきメディアの姿勢も問題ですが、しかし番組降板が続くのは気になることではあります。

「I LOVE...」のApple MusicのCM、わずか15秒でOfficial髭男dismのゴスペル愛がよく解る

短い映像ながら強く惹かれるものがあります。

ライブ映像に関しては下記に詳細が記載されているのですが。

実際のミュージックビデオ(→YouTube)、今回公開されたライブ映像とは別に用意された15秒のCM映像で、ジャケット写真がどうやって生まれたかが解る仕組み。ジャケット写真がどう生まれたかをこのタイミングで明かすのは巧いですね。

そしてそれ以上に巧いと思ったのが、CM冒頭に挿入したピアノのイントロ。そこから2番サビ前のハンドクラップに持っていくところにつなげるあたり、Official髭男dismのゴスペル好きが炸裂しているように思うのです。

今回のピアノからは他にも思い出される曲があるかもしれませんし、マライア・キャリー「You're So Cold」はその歌詞自体ゴスペルではないのですが、収録された彼女の1991年作のアルバム『Emotions』をよく聴いた身としては、後半のオープニングであるこの曲を真っ先に想起した次第。

このアルバム収録曲ではなんといってもタイトルトラックが有名ですが、「Make It Happen」の格好良さも白眉。翌年に収録されEPとしてもリリースされたMTVアンプラグドライブでは、よりゴスペルらしさを感じる仕上がりとなっています。

後にソロ歌手としてデビューするケリー・プライスをはじめとする重厚なコーラス、連弾が印象的なピアノ、そしてハンドクラップの引用はまさにゴスペル的。なによりミュージックビデオの舞台が教会なのですから、意識していないわけがないですよね。

ヒゲダンのメンバーは『Emotions』リリース前後に生まれているわけですが、もしかしたら後にこの作品に触れ、「I LOVE...」や「Stand By You」等に散りばめられたゴスペルエッセンスの源流になったのかなと勝手ながら思っています。

 

ちなみにヒゲダン×ゴスペルといえば。

くしゃみしたメンバー(上記動画では笑福亭鶴瓶さん)によく"bless you"と声をかけているそうですが、これは外国で同様の使い方をしている方を真似てのもの。ゴスペルで"bless you"といえば”God Bless You (神の御加護がありますように)”という意味で用いられるんですよね(なお、くしゃみにおける"bless you"はお大事にの意味合いが強い)。偶然外国での仕草を真似たとはいえ、この言葉をチョイスするのもヒゲダンのゴスペル好きの一端かなと思っています。