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青森県在住。毎週日曜日17時から、FMアップルウェーブ発の番組の一員として参加。音楽・ラジオ好きによる"日々の音"やメディアの話

出し直しという意味での”デラックス・エディション”商法を疑問視する

今年の日本レコード大賞、優秀作品賞にカンナ(渡辺直美)さんとの「キラキラ」が選ばれたAIさん。その曲は、オリジナルアルバム『和と洋』リリース後ゆえか配信での発売となっていましたが、先月リリースされたデラックス・エディションとなる『和と洋と。』が発売され、そこに収録されていました。

なお彼女は、10月25日にアルバム「和と洋」の豪華盤「和と洋と。DELUXE EDITION」をリリースする。本作には「和と洋」の収録曲に加え、AIと渡辺直美のデュエット曲「キラキラ feat.カンナ」や映画「パディントン2」の日本版主題歌「Little Hero」など8曲のボーナストラックが収録される。

AI、最新アルバム曲で構成したメドレーMV(動画あり) - 音楽ナタリー(9月8日付)より

つまり、『和と洋と。』は『和と洋』に8曲を追加した形であり、これからAIさんに興味を持ちアルバムを買いたいと思えば、『和と洋と。』だけを買えばよいはずです。それにしてもこの”後出しでデラックス・エディションをリリースする施策”、彼女においては幾度となく行われており、今回もか...と遅ればせながら知って唖然としました。

以前のブログ(出し直し盤は熱心なファンを踏みにじってやいないか?(2016年5月18日付)では、『一度購入した人にとって、今回の出し直し分を知って”なぜあの時買ったんだろう...”と意気消沈したのではないか』『音源をCDでコンプリートしたいというAIさんの熱心なファンにとっては、昨年のベスト盤を買った後、あらためて出し直し分も買わないといけない』と、購入する側にとってのデメリットの視点で書きました(ただし後者において、熱心であればあるほど盲目的になりやすく、お金を払うことを厭わないとする考えもあるでしょう)。しかしこれは購入者のみならず、CDを販売する小売店側にもデメリットがあります。『和と洋』の在庫が残っている段階で『和と洋と。』を売ることになれば、『和と洋』の在庫は安価販売しない限り捌けず、値引き分は結果的に小売店の負担になってしまいます。またレンタルCDショップにおいても、たとえば「キラキラ」の音源を手に入れたいとした方が誤って同曲が未収録である『和と洋』を借りてしまい混乱をきたすという可能性も生まれます。今年『NHK紅白歌合戦』でおそらく「キラキラ」を歌うでしょうから、この混乱は容易に想像出来、その結果、”紛らわしい...”というマイナスイメージを抱いてしまいかねません。その矛先は店舗にのみならず、レコード会社そしてAIさん側にも向けられるのではないかと思うのです。

まして、AIさんにおいてはこのデラックス・エディション名義での出し直しが多数。以前のブログではそこまで確認出来なかった(ゆえに以前のエントリーを踏まえれば『和と洋と。』が三度目だと勘違いしていた)のですが...実は、『ORIGINAL A.I』(2003)が発売4ヶ月後に1曲追加+DVD付で、『BEST A.I.』(2009)が発売2ヶ月後に初回限定盤同梱のDVDとは別のDVDを付けた”Re-born”版として、『INDEPENDENT』(2012)が発売8ヶ月半後に4曲追加+ライブCD付で、『MORIAGARO』(2013)が発売4ヶ月後に5曲追加+ミックスCD付で、『THE BEST』(2015)が発売半年後に9曲追加で、いずれも出し直し発売されています。つまり『和と洋』(からの『和と洋と。』)で6度目ということになるのです(ALBUM | AI Official SiteおよびTHE BEST-DELUXE EDITION - AIを参照)。もしかしたら出し直しの施策が彼女のファンにとってはデフォルトと認知されている(ゆえにファンはこのエントリーを”何を今更...”と思うかもしれない)のでしょうが、冷静に考えれば釈然としないと思うのは自分だけではないはずです。ならば通常盤とデラックス・エディションとを同時発売にして、収録曲の少ないほうをスペシャルプライス盤として出したほうがいいのでは?と思うのです。前回のブログエントリーの最後にそういった考えを記載したのですが、その思いを今回より強く抱くこととなりました。

 

今回の『和と洋と。』ですが、実は集計週におけるビルボードジャパンアルバムチャートトップ100にも、オリコン週間CDアルバムランキングトップ50にもランクインしていないのです(いずれも11月6日付)。周知が足りなかったのかは解りかねますが、もしかしたらAIさんやレコード会社の狙いが周囲にとっては裏切りと思われているのかもしれません。CDを買ってほしいという思いは理解出来るとして、あまりにも不親切な対応であり中長期的に信頼度を失っているのみならず、セールス面という短期的な成果も上げていない以上、この施策から手を引くのが最善と考えます。