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チャート愛好家。ビルボードジャパンや米ビルボードのソングスチャートなどを紹介します。

初のトップ10を果たした瑛人「香水」を支えるサービスとは?…5月11日付ビルボードジャパンソングスチャートをチェック

毎週木曜は、前日発表されたビルボードジャパン各種チャートの注目点をソングスチャート中心に紹介します。

4月27日~5月3日を集計期間とする5月11日付ビルボードジャパンソングスチャート。前週シングルCDセールスを武器に首位に輝いたHKT48「3-2」は100位圏外に急落し、Official髭男dism「I LOVE...」が2週ぶり、通算6週目の首位を獲得しました。

ゴールデンウイーク前半を集計期間としているからでしょうか、ポイントが伸びた曲が多い印象のある5月11日付ビルボードジャパンソングスチャート。とりわけOfficial髭男dismは「I LOVE...」が前週比104.6%となったのみならず、「宿命」(7位)が100.7%、「パラボラ」(8位)が115.2%、トップ10落ちとなりましたが「イエスタデイ」(11位)が101.2%と前週から伸ばし、「Pretender」(3位)は前週比98.0%とダウンするも微減にとどまっています。「パラボラ」は集計期間中にミュージックビデオが公開されたことも上昇の要因と言えます。

 

今週はLiSA「紅蓮華」が遂に2位に達し最高位を更新したのも注目ですが、瑛人「香水」が5位に急上昇したのがなんといっても大きく、前週初のトップ10入りを果たしたヨルシカ「花に亡霊」(今週10位)、YOASOBI「夜に駆ける」(同6位)を飛び越えてきました。

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「香水」は元々、昨年リリースされた初の配信作となるEPの表題曲。

FANTASTICS from EXILE TRIBE中島颯太さんがカバーしていることなどもあってTikTokから火がついたこの曲ですが、瑛人さん自身は戦略的に仕掛けたことはないと、自身初となるメディアインタビューで答えています。

戦略といえば、ファンとのエンゲージメントに長けたYOASOBIの例を前週紹介しました(ストリーミング強者が結果を出した5月4日付ビルボードジャパンソングスチャート、YOASOBIが一歩抜け出した理由は(4月30日付)参照)。瑛人さんも「香水」のカバー動画を何度かTwitterにて紹介しており、ごく自然にエンゲージメントという仕掛けを行っていると言えそうです。尤も、本人は仕掛けや戦略とは捉えていないかもしれません。

 

さて、インディペンデントで活動するからか、音楽ナタリーでも未だ記事が存在しない瑛人さん。そんな彼の配信に関わったのはTuneCore Japanという、”誰でも自分の曲を世界185カ国以上の配信ストアで配信販売できる”と謳うサービスです。

瑛人さんの曲をiTunes Storeでみると、リリース元は”Eito”とクレジットされています。TuneCore Japanではないところがポイント。

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EP『香水』のリリースの際、TuneCore Japanでは配信先も含めアナウンスを実施。

そのTuneCore Japanは、新型コロナウイルスが未だ強く蔓延る状況において、先月に全サービスの無償提供を実行しました。期間は5月末まで延長されています。

TuneCore JapanのTwitterアカウントでは現在上記ツイートがトップに固定されていることもあり、ここからTuneCore Japanの、インディペンデントで活動する歌手の火を絶やさないという思いが感じられます。さらには歌手がリリースした後も、たとえばチャートイン時やサブスクのプレイリスト入りの際にその旨を紹介することで、アフターフォローを欠かしていません。これもインディペンデントで活動する歌手にとっては嬉しいことです。

 

今回の瑛人「香水」のヒットはTikTok発と言われ、チャートを紹介するブロガーの方やチャートのいわゆる中の人も、この点を大きくフィーチャーしているのが見受けられます。

TikTokでヒットに至るためにはそのための配信が前提となるわけで、TuneCore Japanはまさに縁の下の力持ちと言えるのですが、そのTuneCore Japanはさらに新たなサービスを昨日開始し、ヒットを生み出す環境をさらに強化しています。

 

TikTokからサブスクや動画再生といったストリーミング全体に波及し、遂には総合チャートで上昇するという流れ、米ビルボードソングスチャートではごく自然に見られる現象となっています。

「Old Town Road」の特大ヒットについては昨年度のチャート振り返り時に記載しています。

最近ではドージャ・キャット「Say So」も同様。日本では別の曲が既にチャートインしていましたが、TikTokでのヒットを経て「Say So」の人気も徐々に高まっています。

さらに、3週前に米ビルボードソングスチャートを初登場で制したドレイク「Toosie Slide」は、配信開始直前に敢えてTikTokにて未発表曲だとアナウンスし使わせることで成功に至っています(もしかしたら狙ってリークしたのではないのかもしれませんが、狙ったと分析している方は少なくありません)。現にTikTokでは新記録を樹立しているのです。

能動的な仕掛けがあるか否かの差はあれども、TikTokがヒットにとって重要な要素であり起点になっていることは間違いなく、そしてそこでヒットした曲をサブスクにつなげる動線を用意することも必要となります。その意味で、TuneCore Japanの役割が如何に重要か、そしてサブスクが如何にヒットを後押ししている存在かがよく分かるはずです。今後、瑛人「香水」のようなヒットが生まれてくることは間違いなく、ならば先に取り上げた音楽ナタリーをはじめとするニュースサイトや、「香水」がラジオエアプレイ指標で今週300位未満となっている状況を勘案するにラジオなどの既存メディアも、フレキシブルに紹介しないといけなくなるものと考えますし、チャートを追いかける身としても気を引き締めた次弟です。

 

 

最後に。今週発表された米ビルボードソングスチャート、およびビルボードジャパンソングスチャートを紹介するポッドキャストを更新しました。こちらでは米チャートにおけるビヨンセの力、そして日本のチャートにおけるDISH//「猫」の取り扱いを中心に触れていますので、こちらも是非よろしくお願いいたします。